7月からVATを15%に引き上げなど、痛みを伴う財政政策発表

(サウジアラビア)

リヤド発

2020年05月12日

サウジアラビアでは3月2日に国内初の新型コロナウイルス感染者が確認されて以降、感染が拡大しており、感染拡大抑制策として外出禁止といった行動制限、それに伴う経済活動の縮小・抑制が続けられてきた。

さまざまな政府機関は、中小企業支援〔900億リヤル(約2兆7,000億円、1リヤル=約30円)〕、民間企業従業員の給与一部補助(90億リヤル)、農業事業者支援(合計3億8,000万リヤル)などの財政支援策を発表するなど、コロナ収束後を見据えた経済の立て直しに積極的に取り組んでいる。しかし他方で、世界的な原油需要の減少に伴う油価低迷により、今年度は政府歳入の6~7割を占める原油輸出収入が大幅に減少することが見込まれ、厳しい財政状況が予想される。4月29日には、財務省が2020年第1四半期(暦年)の収支報告として、341億700万リヤルの赤字を発表し、5月2日にはビジョン2030下の大型プロジェクトに対する支出減にも言及したばかりだ〔5月2日付サウジアラビア国営通信(SPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。

このような状況下、アル=ジャドゥアーン財務相は5月10日、政府の支出抑制および収入増の一環として、2018年1月以降5%に設定されているVATを、7月から15%に引き上げることを発表した(5月10日付財務省ホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、サウジアラビア人1家庭当たりに毎月支給されていた1,000リヤル程度の手当も6月以降廃止されることが同時に発表されるなど、痛みを伴う内容となった。なお、サウジアラビア人労働人口の約6割を占めると言われている政府職員の給与については、毎年政府支出の約5割を占める最大支出項目となっていることから、今回の削減の対象候補となっているものの、本項目については検討委員会を設け、30日以内に対応方針を発表することとなった。

長らく個人の直接税が存在していなかったサウジアラビアでVATが導入されたのが2018年1月。財務省の収支報告書によると、2018年の税金収入(注)は1,149億8,800万リヤルに達した。2019年には前年比35%増の1,554億1,500万リヤルと大きく伸びた。7月以降のVATの引き上げ幅は大きく、税収の大幅増が期待される。

(注)財務省定義ではTax on Goods and Services (Commodity or activities taxes, VAT, excises tax (tobacco) and oil product fees)と定義されており、同金額にはVATに加え、砂糖入飲料やタバコに課税される物品税ほかの数字も含まれている。当該報告書の中ではVATのみの金額は発表されていない。

(柴田美穂)

(サウジアラビア)

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