米商務省、変圧器用部材と移動式クレーンの輸入に対する232条調査を開始
(米国)
ニューヨーク発
2020年05月08日
米商務省は5月4日、変圧器用部材の輸入に対して、さらに6日には移動式クレーンの輸入に対して、1962年通商拡大法232条に基づく調査をそれぞれ開始すると発表した。商務省がこれら調査の結果を大統領に報告し、大統領がこれら製品の輸入が安全保障に脅威になると認定した場合、大統領は輸入制限措置を採ることができる。現時点では、いずれについてもパブリックコメントの募集など今後の手続きや、輸入制限対象になり得る品目などについては何も示されておらず、今後発表される官報での詳細を待つ必要がある。
変圧器用部材は議会からの要請が引き金か
商務省は5月4日に発表したプレスリリースで、変圧器に組み込まれている積鉄心や巻鉄心、積鉄心の積層の輸入に対する232条調査を開始するとした。調査開始の判断は、複数の連邦議会議員や産業界からの要請に基づくものとしている。実際に、マイク・ケリー下院議員(共和党、ペンシルベニア州)ら25人の下院議員は4月15日、トランプ大統領に対して232条に基づく鉄鋼・アルミ製品に対する追加関税賦課の対象に、これら製品を含む鉄鋼派生品を加えるよう要請する書簡を送っていた。
書簡では、既に課されている鉄鋼・アルミ製品への232条追加関税を回避するために、外国企業がカナダとメキシコで加工した積層鋼板などの鉄鋼派生品の輸入が急増していると指摘。それにより、北米唯一の電磁鋼板生産者であるAKスティールの事業を脅かしているとしている。商務省は、これら製品の国内供給の確保は一般市民、重要なインフラ、防衛産業の生産能力に影響を与える大規模停電に対処できる点を指摘している。ケリー議員は5月4日、政権の調査開始を評価する声明を出している。
移動式クレーンは国内企業からの申請を受けて調査開始
商務省は、5月6日に発表した移動式クレーンの輸入に対する調査開始は、国内企業のマニトワックからの申請に基づくとしている。同社は、特にドイツやオーストリア、日本からの低価格の移動式クレーンの輸入増および外国企業による知財侵害が、国内の移動式クレーン製造産業に打撃を与えたと主張。同社の国内生産2拠点のうち1カ所が閉鎖に追い込まれ、ウィスコンシン州で数百人の熟練労働者の雇用が喪失したと訴えている。
ウィルバー・ロス商務長官はいずれの調査についても「徹底的に行う」としている。232条の手続きによると、商務省は調査開始から270日以内に大統領に報告書を提出し、大統領は報告書受理後90日以内に安全保障上の脅威の有無を判断し、脅威があると判断した場合は15日以内に輸入制限措置を採ることになっている。
(磯部真一)
(米国)
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