インド中銀、新型コロナウイルス対策で追加経済支援策発表

(インド)

ムンバイ発

2020年04月27日

インド準備銀行(RBI、中央銀行)のシャクティカンタ・ダス総裁は4月17日の会見で、新型コロナウイルスの影響で大幅に失速する経済情勢に鑑み、資金調達の促進やリバースレポレート(注)の緊急引き下げなどの追加経済支援策を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。RBIは3月27日に前倒しで政策金利(レポレート)の緊急引き下げなどを発表していた(参照)。

RBIはまず、5,000億ルピー(約7,000億円、1ルピー=約1.4円)の貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTROs)を通じ、ノンバンクの社債などの購入を促し市場の正常化や市場機能の維持を狙う。このうち最低50%は中小規模のノンバンクやマイクロ・ファイナンス機関に充てられる。また、農業セクターや農村地方の経済、中小事業者保護のため、全国農業農村開発銀行(NABARD)に2,500億ルピー、インド小規模産業開発銀行(SIDBI)に1,500億ルピー、全国住宅銀行(NHB)に1,000億ルピーの融資枠が与えられる。そして、市中銀行の滞留預金を民間企業に積極的に流入させるため、リバースレポレートを4.00%から3.75%に即日引き下げた(通常の政策金利は4.40%を維持)。この他にも、各州への直接貸出金額の上限緩和、RBIによる不良債権解決枠組みの期限緩和、銀行の流動性カバレッジ比率の緩和などが盛り込まれている。

ダス総裁は同会見で、世界経済の失速は1930年代の世界恐慌以来のものだが、このような状況においてもIMFはインドの2020年度GDP成長率を1.9%と予測しており、G20の中で最も高い成長率であることに言及。また、バンキング・セクターではロックダウン以降、RBIが様々な政策を行ったことが功を奏し、支払いシステムは途切れることなく機能していることを強調した。加えて、農業セクターは比較的好調で、今年度のモンスーンや収穫量も例年並みと予測されていると述べた。

一方、インド政府はロックダウン中も従業員への給与支払いを勧告しており、事業所の賃料や各種税金などの運転資金が不足する企業も増えている。直接的な企業への資金支援策が講じられておらず、中小企業を中心に資金繰りは悪化しつつある。

(注)中央銀行が市中銀行から流動性預金を借り受ける際の利率。この利率を引き下げることは、市中銀行にとって中央銀行に貸し付ける魅力が下がることを意味する。つまり、市中銀行が流動性資金を中央銀行ではなく、民間企業へ貸し出す効果を生むため、景気刺激策になる。

(比佐建二郎)

(インド)

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