各州自治体は自宅待機措置を強化、政府はGDP比5%規模の緊急経済対策を発表
(チリ)
サンティアゴ発
2020年04月03日
4月1日現在のチリにおける新型コロナウイルス感染者数は、3月31日から293人増加し3,031人、うち死者は16人となった。医療施設内で治療を受けている者は173人、病状が既に回復した者は234人となっている。感染者の分布は、首都圏州が50%と最も多く、続いてアラウカニア州11%、ニュブレ州9%だ。
感染者数の増加に伴い、それぞれの地域では対応措置が取られている。アラウカニア州のテムコ市とパドレ・ラス・カサス市は、3月28日午後10時から無期限の強制自宅待機措置を実施、ニュブレ州のチジャン市とロス・ラゴス州オソルノ市は、3月30日午後10時から7日間の同措置が取られている。また、新たにマガジャネス州のプンタ・アレナス市が4月1日午後10時から7日間の同措置を実施、3月20日から既に同措置を実施しているイースター島は4月17日まで期間を延長する。首都圏州は同措置を講じている7コムーナ(注)のうち、ロ・バルネチェア、ビタクラ、ラス・コンデス、プロビデンシア、サンティアゴ、ニュニョアの6コムーナについて期間を1週間延長し、4月9日までとすることが発表されている。
117億5,000万ドルの緊急経済対策の実行
国内で感染が急速に拡大している状況を受け、3月19日にセバスティアン・ピニェラ大統領は、GDPの4.7%に相当する117億5,000万ドルの緊急経済対策法案を発表した。法案には、保健省の予算の増強、中間層と貧困層の支援、新型コロナウイルス感染者などの雇用保護、個人や中小零細企業に焦点を置いた信用供与の強化、納税時期の延期などが盛り込まれている。詳細は以下のとおり。
(1)保健省の予算を2%増強
(2)家庭の収入保証
- 収入の保証:最大20億ドルを連帯失業基金に支出する。衛生危機のために、在宅勤務も出来ず自宅にとどま らなければならない者は、雇用主と相互の合意があり、保健当局からの委任がある場合に限り給料の支払いが失業保険によって保証される。
- 雇用保護:労働日数の短縮や報酬の減少を連帯失業基金で補填(ほてん)することについて早急に審議を行う。
- 「Covid-19」特別手当:単一家族助成金(Subsidio Único Familiar)に相当する金額を200万人の非正規雇用の人々に対し支給する。予算規模は1億3,000万ドル分を見込む。
- 危機に直面する連帯基金:衛生危機に伴う売り上げ減少などに直面する者に向けた1億ドルの連帯基金を設立する。
(3)労働者の雇用と雇用を生み出す企業の保護
- 今後3カ月間は法人税の月々の支払いを保留。
- 売上高が35万UF(約12億円)(注)未満のすべての企業における今後3カ月間の付加価値税支払いの延期。
- 中小企業の所得税の納税を2020年7月までに延期。
- 売上高が35万 UF未満の企業と、税額が1億3,300万ペソ(約1,600万円、1ペソ=約0.12円)未満の資産家に対する4月の納税の延期。
- 今後6カ月間、印紙税を一時的に0%とする。
- 中小企業および低所得者のための救済措置として、利息や罰金なしに債務支払い契約を締結することを許可する。また司法機関による徴収および税債務関連訴訟を一時的に停止する。
- 企業の衛生危機対処に際しての関連費用は、税金費用(Gasto Tributario)として処理が可能。
(注1)コムーナとは、国の地方行政の基本単位のこと。
(注2)1UFは約2万8,600ペソ。UF:消費者物価指数の変動率に応じて調整されるインデックス。Unidad de Fomentoの略。
(岡戸美澪)
(チリ)
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