感染者増加に備え、人工呼吸器などの国内生産を増大

(ベトナム)

ホーチミン発

2020年04月10日

ベトナムの地場不動産デベロッパー大手でコングロマリットのビングループは4月3日、国内市場向けに人工呼吸器と体温測定器の生産を開始することを公表した。人工呼吸器については、米国のメドトロニック(Medtronic)と人工呼吸器(PB560)のライセンス契約を締結したほか、マサチューセッツ工科大学(MIT)が設計を公開している人工呼吸器(N)の研究にも着手した。同グループの自動車メーカー・ビンファストおよびスマートフォンメーカー・ビンスマートで、PB560は月1万台、Nは月4万5,000台の生産を見込んでいる。

ベトナムでは、新型コロナウイルスの感染者は245人(4月7日現在)であり、4月4日以降、新たな感染者を1日当たり1~4人に抑制できている。しかし、グエン・スアン・フック首相は6日の政府会合で、諸外国の感染拡大状況を踏まえ、社会的隔離を継続するとともに、第2波に備えるよう指示した(4月6日付ベトナムニュース)。そうした中、ベトナム政府は現在、感染者数増加に備えた人工呼吸器などの医療機器の確保に注力している。

ビングループの人工呼吸器1台当たりの価格はPB560が1台1億6,000万ドン(約74万円、1ドン=約0.0046円)、Nは1台2,200万ドン(約10万円)だ。体温測定器の価格は1,600万ドン(約7万円)で、市販の価格を大きく下回る予定だ。

また、ベトナム出身のチャン・ゴック・フック氏が会長を務める人工呼吸器メーカーのメトラン(本社:埼玉県川口市)は4月6日、救急治療用人工呼吸器の大量生産に向けて準備を進めていることを公表した。ベトナムから既に4,000台受注しているという。フック会長は、センサーなど原材料調達と人材の確保の課題を克服すれば、月産5,000~1万台の生産が可能との見通しを示した(「バオモイオンラインニュース」4月2日)。

ベトナムには現在、約6,000台の人工呼吸器があり、うち1,000台超がホーチミン市にあるもようだ(「トイチェオンラインニュース」4月5日および4月7日ホーチミン市保健当局へのジェトロによるヒアリング)。

(比良井慎司)

(ベトナム)

ビジネス短信 27af0c38a94fc5c5