新型コロナ国内感染拡大後も食肉供給に異常なし
(ブラジル)
サンパウロ発
2020年04月07日
ブラジルには、国内のみならず欧米や中東アジア地域に食肉を供給する世界有数の食肉加工メーカーが集積する。国内での新型コロナウイルスの感染急拡大により、国内各州は3月22日の週からロックダウン(都市封鎖)に踏み切ったが、食肉加工大手各社は生産継続を表明している。国内の物流は航空輸送が困難になったが、陸路輸送には大きな問題は出ていない。
ブラジル経済省のコモディティ輸出統計によると、2020年3月の生鮮牛肉輸出量は前年同月比6.2%増、前月比13.8%増の12万5,900トン、生鮮鳥肉輸出量は前年同月比2.3%増、前月比0.1%増の32万4,600トン、生鮮豚肉輸出量は前年同月比33.5%増、前月比9.0%増の6万3,300トンと3月時点の食肉輸出は好調だ。
ブラジル各州は3月22日の週からロックダウン(都市封鎖)を行っているが、製造業や物流、生活必需セクターは企業活動の継続が可能となっている。国内食肉メーカー大手各社も操業を継続している。感染の急激な拡大局面にあわせ、各社は一部の工場を停止させたものの、これは一時的なブラック ジャック 必勝 法需要の落ち込みやコンテナ不足によるものだ。「レストランから自宅へ」と消費行動は変化したものの需要自体は減っていないため、各社とも生産体制は維持している。家畜飼料不足の問題も顕在化していない。4~5月にはブラジルでの感染拡大がピークを迎えると予想される中でも、食肉加工大手各社は底堅い国内需要と中国需要の回復もあり生産継続を表明している。
ブラジル食肉加工メーカー大手各社の生産状況は以下のとおり。
【JBS(世界最大の食肉加工メーカー)】
諸外国の需要減少により3月18日に国内37工場中5工場の20日間停止を発表。同社は市場動向に基づく工場停止は一般的だと説明。4月3日に3,000人の新規雇用と向こう5年間の投資額80億レアル(約1,600億円、1レアル=約20円)維持を発表。ブラジル国内の現従業員は約12万人。
【マルフリギ(世界第2位の食肉加工メーカー)】
3月17日からパラ州ツクマン工場稼働停止。食肉生産を、生産能力高く生産性に優れる他の国内12工場に集約する。
【BRF】
5月末までレイオフを行わない。既存従業員の自宅隔離を考慮して新たに2,000人を雇用して生産継続。6月には生産安定と予想するが想定外のシナリオの場合は別途検討する。感染拡大後、消費者はレストランではなく自宅で食事しているため、レストランから小売りへの販売をシフト。サプライチェーンや販売量に問題は生じていない。家畜飼料用トウモロコシの在庫は豊富で問題なし。現時点で従業員への影響はなく世界保健機関(WHO)指針に従い工場従業員の間隔を1メートル以上空けている。
【ミネルバ・フーズ】
フードサービスの需要低下や世界各地域での物流上の制約を理由に、3月23日から国内11工場中4工場の生産を最大15日間停止。物流上の制約は中国輸出に使われたコンテナが同国の混乱でいまだ戻ってきていないが一時的なもの。
制限下でも物流は止まらず
ブラジル国内の物流や輸出への影響はどうか。ブラジルは、陸海空路を通じた外国人の入国を禁止しているが、物流上の制限はない。航空輸送は困難になったが、海運は、一時、中国にコンテナが滞留したことによるコンテナ不足が生じていたが解消に向かっている。新型コロナウイルス感染拡大による影響で、一部の自治体はハイウェー沿いのドライブインを閉鎖する一方で、連邦政府は「経済活動上不可欠なセクター」としてハイウェー、ドライブイン、ガソリンスタンドの開店を義務付けている。4月2日現在、全国27州で68%のドライブインが稼働、32%が閉鎖、ガソリンスタンドは98%が稼働、コンビニは65%が稼働している。
ブラジル国内では「レポン」と呼ばれる携帯アプリを通じて、最寄りで開店している店舗を確認でき、トラック運転手などの間で活用が広がっている。ブラジルでは、2018年のトラックストで物流が止まり製造業は大打撃を受けたが、現在は、200万人に上るトラック運転手が、人命救助に取り組む医師や看護師と同様に、感染リスクの中で懸命にブラジルの物流を支えている。
(大久保敦)
(ブラジル)
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