欧州委、今後の対英協議は「困難だが合意可能」との見方示す
(EU、英国)
ブリュッセル発
2020年03月06日
欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は3月5日、EUを離脱した英国との新たなパートナーシップ関係構築のための初回交渉を終えて所感を発表、「(双方の相違のうち)幾つか非常に困難な問題がある」と指摘すると同時に、「双方に有益な合意を実現することは可能だ」とコメントした。
合意あり・なしの2ケースへの準備の必要性を強調
バルニエ首席交渉官は、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐって2020年内に取り組むべき課題として、(1)英国と合意した離脱協定の適切な履行、(2)新たなパートナーシップ関係について2021年1月1日時点で合意できた場合とできなかった場合の両面で起こり得るさまざまな変化に向けて準備すること、(3)英国との新たなパートナーシップ関係の再構築、の3テーマ(段階)があると述べた。
(2)について首席交渉官は、今後10カ月以内に確実に起こる変化に対して、EU加盟国の政府、企業などは迅速な対応を迫られることになると指摘。移行期間が終了した2021年1月1日時点で英国はEU単一市場や関税同盟、EUが締結する国際協定から離脱することになり、EU・英国の関係は「これまでどおり」ではなくなるとの認識を示した。また、「こうした最終的な変化やそれらに伴う問題は過小評価されている印象がある」とも語り、移行期間終了後に起こる事態について危機感を強めた。
これらの問題の具体例として、首席交渉官は「2021年1月1日から英国との全ての輸出入について通関手続きが適用されること」「同日から英国で設立された金融機関は(英国がEU加盟国だった当時の前提で取得した)金融パスポートの効力を自動的に失うこと」「英国当局が発行した許認可と認証に基づく車両や工業品、さらには医療機器などについては、EU市場での流通が認められなくなること」を挙げた。
公平な競争条件の確保などが主要な相違点
さらに、現時点でのEUと英国側の交渉上の相違点について、公平な競争条件の確保、犯罪に関わる司法・警察協力、将来関係に関わるガバナンスの問題、漁業問題の4点を指摘した。
ただ、これらの課題や相違点を踏まえた上でも、現時点での認識としてEU・英国の双方に有益な合意を実現することは可能と述べている。
(前田篤穂)
(EU、英国)
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