政府予算案に新型コロナウイルス感染対策、インフラで大規模拠出も

(英国)

ロンドン発

2020年03月18日

英国政府は3月11日、2020年度(2020年4月~2021年3月)の予算案を発表した。歳出は9,280億ポンド(約122兆4,960億円、1ポンド=約132円)、歳入は8,730億ポンドを見込む(添付資料参照)。

予算案では、感染拡大する新型コロナウイルス対策として120億ポンドを拠出することが盛り込まれた。50億ポンドを国営医療サービス(NHS)や地方自治体の社会保障のサービス水準維持に充てるほか、4,000万ポンドをウイルス関連の研究に充てる。1億5,000万ポンドは、感染拡大する他国に向けたIMFによる支援に拠出する。感染者や自宅隔離を命じられた従業員には初日から法定の病欠手当が支給されるほか、個人事業主にも感染や自宅隔離となった場合に手当を支給する。従業員250人未満の企業には、従業員に支払う上述の病欠手当について最大14日間分を還付するほか、感染に伴い生じた経費を補助する。さらに、小売店やレジャー、観光産業の店舗にかかる事業税(ビジネスレート)を1年間免税とするなど、感染拡大の影響が大きい中小企業を支援する姿勢を示した。新型コロナウイルスへの対応としては、同3月11日にイングランド銀行(中央銀行)が政策金利を0.75%から0.25%に緊急利下げすることを発表し、経済縮小の影響緩和のための措置を実施している。

新型コロナウイルス対策以外の面では、国民の注目度の高いNHSには60億ポンドを拠出することを明らかにした。かかりつけ医師(GP)の体制を拡充し、診察回数を5,000万件増加させることや、看護師を5万人以上追加雇用する。また、病院の駐車スペースの拡大や、自閉症・学習障害を持つ人々への支援に充てる。インフラ整備については、今後5年間で6,400億ポンドと大規模拠出を行い、道路、鉄道、ブロードバンド、住宅といった分野の整備に向ける。ビジネスに向けた支援としては、ビジネスレートの根本的な見直しについて、2020年秋に公表するとしている。環境対策としては、6年間で、洪水対策に52億ポンドを拠出するほか、電気自動車(EV)の普及に向け、充電設備やEVなど低排出車への購入補助などに向けた予算も設けている。そのほか、最低賃金の引き上げや、ホームレス問題の解消、地方自治体やスコットランド、ウェールズ、北アイルランドなど地域に向けた資金も盛り込んでいる。

(木下裕之)

(英国)

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