新型コロナウイルスの感染拡大で米FRBが緊急声明を発表、追加利下げの可能性高まる
(米国)
ニューヨーク発
2020年03月03日
ジェローム・パウエル米国連邦準備制度理事会(FRB)議長は2月28日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急声明文を発表した。FRBは「新型コロナウイルスの動向と経済見通しに与える影響を注意深く監視」し、「経済を支えるために、われわれの政策ツールを使い、適切に行動する」とした。
市場では、今回の声明文発表を受けて、次回3月17、18日に予定されている米国連邦公開市場委員会(FOMC)において、FRBは最大0.5ポイントの追加利下げを決定するのではないかとの見方が広がりつつある。例えば、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のデータによると、3月2日時点において、市場が織り込む次回3月会合における0.5ポイント利下げの確率は100%となっている(図参照)。
新型コロナウイルスの感染拡大を通じた経済の下押しリスクに言及
これに加えて、声明文では「米国経済の基盤は引き続き力強い」ものの、「新型コロナウイルスは経済活動にリスクをもたらしている」とし、経済の下押しリスクに対する強い警戒感も示された。企業の購買担当者に対するアンケート調査結果をみると、既に景況感の悪化が確認され、2月の米国のIHSマークイット製造業購買担当者指数(PMI)(2月21日発表)は、前月(53.3)から3.7ポイント減の49.6となった。拡大局面を示すベースラインの50を下回るのは、政府機関の一部閉鎖があった2013年10月以来、6年4カ月ぶりとなる。
IHSマークイットのチーフ・ビジネス・エコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「(今回の指数)悪化の一部は新型コロナウイルスの感染拡大に関連したもので、旅行・観光業界の需要低迷、輸出の減少、サプライチェーンの混乱などが影響している」とした(「IHSマークイットPMIニュースリリース」2月21日)。このように先行きの不確実性が高まる中で、今後の経済指標などの状況次第では、FRBは次回3月会合を待たずに利下げの決定に踏み切るのではないかとの見方もされている。
米国投資銀行大手ゴールドマン・サックスのヤン・ハチウス氏率いるエコノミストらは「(FRBは)今後数週間にわれわれが予想する緩和策を、早ければ今後1週間のうちに(他国・地域の中央銀行と)協調したかたちで実施する可能性も十分に考えられる」と指摘した(「ブルームバーグ」電子版3月1日)。
(権田直)
(米国)
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