原油価格下落により財政赤字に転落、GDP成長率も押し下げ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年03月23日

ロシアでは世界的な新型コロナウィルス感染拡大による原油価格の下落にともない、ロシア経済の悪化が予想されている。

ロンドン国際石油取引所(ICE)におけるブレント原油価格は3月18日に1バレル28ドル以下と2016年1月以来の水準にまで落ち込み、国際原油相場の主要指標であるWTIは1バレル26ドルと2002年11月以来の低価格となっている。これを受けロシアのルーブルの為替レートが、引き続き下落を続けており、ロシア中央銀行が発表している3月19日付公定レートは1ドル=77.2131ルーブル、1ユーロ=84.8881ルーブルとなり、2016年2月以来の安値となった(「コメルサント」紙3月18日)

アントン・シルアノフ財務相は3月18日、ロシア経済は資源価格下落によって複雑な状況下にあるだけでなく、新型コロナウイルス感染拡大によって経済セクター全体が縮小していると指摘。特に、航空輸送などの運輸業、観光業、小規模ビジネスに影響が生じているほか、自動車など高額商品の消費が縮小しており他の経済セクターにも拡大していると述べた。

加えて、原油価格の減少によって、主要な歳入減である石油ガス関連収入が3兆ルーブル(約4.2兆円。1ルーブル約1.4円)減少するため、財政赤字が発生すると指摘。これには国民福祉基金(注)を用いて埋め合わせると語った(「インターファクス通信」3月18日)。

ロシアの格付機関アクラの発表(3月17日)によると、今回の原油価格下落と新型コロナウィルス感染拡大の影響はロシアのGDP成長率を0.6~1.0%押し下げるとし、2020年通年のGDP成長率はマイナス0.2%~プラス0.6%の間となると予測している。

(注)石油天然ガスの輸出余剰金の一部を積み立て、インフラプロジェクトや開発金融機関への資金供給、対外債務返済などに活用されている国家ファンド。

(齋藤寛)

(ロシア)

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