新型コロナウイルスめぐり警戒事態を宣言、厳格な移動禁止措置を発動

(スペイン)

マドリード発

2020年03月17日

スペイン政府は3月14日、新型コロナウイルスの感染拡大封じ込めのため「警戒事態」を宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、スペイン全土で移動制限を開始した。警戒事態宣言はスペイン憲法116条(緊急事態条項)が定める3つの事態のうち、戒厳事態、非常事態の下位に位置付けられている。

保健省の15日午前11時30分時点の発表によると、国内感染者数は7,753人(死亡者数288人)と過去5日間で5倍と加速度的に増加。15日の当地報道によると、スペインからの渡航者に対し入国制限を実施している国は73カ国に上る。スペイン側での水際対策は16日時点で引き続き行われていない。

罰則規定を伴う移動禁止措置

14日公布の勅令第463/2020号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、移動制限は3月14日より15日間にわたり実施され、状況に応じて下院の承認により延長することが可能。食料や医薬品など生活必需品の購入や医療機関や職場、銀行などへの移動、高齢者や病人などの介護、未成年の保育などの不可欠な活動のための移動を除き、全ての移動が原則禁止されている。

また食料品店と薬局を除く全ての店舗や娯楽施設は閉鎖、イベント・行事も全て中止・延期、葬儀などの宗教行事については人との間に1メートルの安全距離を置くことが義務付けられている。航空便を含む公共交通機関も運行頻度通常の半分以下に引き下げる。貨物の通関は保証されるものの必需品の通関が優先される。

同措置は罰金や禁固などの罰則規定があり、15日より警察が全国市街地や駅でパトロールを開始したほか、軍は全ての演習を停止して感染防止活動にあたっていると報じられている。

スペインでは11日前後より一部の自治州で一斉休校やテレワークが開始された結果、東部海岸のリゾート地に感染拡大地域の住民が詰めかけ、感染を恐れた自治体が13日より相次いで沿岸部の封鎖に踏み切ったという経緯もあり、移動制限は厳しく運用されるとみられる。

政府は180億ユーロ規模の支援策を発表

首相は、今は感染封じ込めが最優先のため経済への打撃は不可避であるとして、17日の閣議で雇用や経済活動を守るための措置を承認すると述べた。

スペイン政府は10日にも、以下を柱とする182億2,500万ユーロ規模の緊急対策を発表済み。

  • 中小企業・個人事業者の資金繰り支援として6カ月間の納税分割・延期(140億ユーロ)
  • 医療物資の調達強化(28億ユーロ)
  • 観光等セクターの企業・個人事業者に対するつなぎ資金融資(4億ユーロ)
  • 観光関連職種の社会保険料の減免
  • 緊急医療予算(10億ユーロ)
  • 貧困層の子女への給食支援・学校給食業の操業支援(2,500万ユーロ)
  • 在宅隔離・検疫者への労災適用(社会保険料の標準報酬月額の75%を給付)
  • 緊急時における関連医薬品・医療物資価格の小売価格規制

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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