新型コロナウイルス感染症拡大で非常事態宣言、一部自治体封鎖で日系企業にも影響
(ポルトガル)
マドリード発
2020年03月26日
ポルトガルのマルセロ・ソウザ大統領は3月18日、国内での新型コロナウイルスの感染拡大を受け、非常事態宣言(大統領令nº 14-A/2020)を発表した。
3月19日から4月2日まで15日間にわたり、食料品以外の小売店や飲食店、商業施設の閉鎖を命じるとともに、国民の移動を制限。生活必需品の購入、優先度の高い仕事、医療機関訪問、介護、単独での運動、ペットの散歩、その他やむを得ない事情を除き、原則的に外出禁止となった。ポルトガルでは3月13日にWHOのパンデミック宣言を受けた警戒事態を宣言し、大人数のイベント開催禁止措置や医療サービスの即応体制の構築を開始するとともに、レイオフの支援や16日からの一斉休校を発表していたが、今回はそれを非常事態に格上げした形。
ポルトガル保健省の25日付発表によると、同日午後8時時点で国内で確認された感染者数は 2,995人(うち死者は43人)だが、その他感染の疑いがある人が2万1,155人と過去10日間で急増しており、感染拡大による医療機関の麻痺を未然に防止することが急務とされている。
企業に資金繰り支援や納税猶予
ポルトガル政府は3月18日、2020年第2四半期の経済対策における、感染拡大で打撃をうける企業や労働者を対象とした経済救済措置を発表した。主な内容は以下のとおり。
- 企業の資金繰り支援:飲食・観光、一部製造業(繊維・アパレル、鉱業、木材)向けに合計30億ユーロの信用保証枠。うち10億4,500万ユーロは中小企業向け。
- 税制:付加価値税や所得税源泉徴収、法人税に納付猶予。
- 社会保険料:従業員50人未満の企業に対し3~5月の社会保険料企業負担分を3分の1に減額。250人未満の企業についても条件を満たせば適用対象になる。
- 決済システム:公衆衛生上の理由から現金払いを控えるためコンタクトレス(身体接触がないタイプの)カードの利用上限額を20ユーロから30ユーロに引き上げ
一部自治体が完全封鎖で物流がストップ
ポルトガル政府は、今回の非常事態発動に先立ち、17日に北部ポルト近郊で感染者が急拡大したオバール市について災害事態を宣言。同市を完全封鎖し、医療、治安関係者は例外として、食料品店、ガソリンスタンド、薬局を除き、外部との往来を禁じるとともに、市内のすべての産業活動を原則禁止した。
同市の工業団地には日系企業を含む企業10社ほどが入居しており、封鎖による操業停止や物流寸断の影響を大きく受けている。
(小野恵美)
(ポルトガル)
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