米石油業界、民主党大統領選候補者の気候変動対策を批判、調査報告書を発表
(米国)
米州課
2020年03月05日
米国の石油団体American Petroleum Institute(API)は2月27日、フラッキング(水圧破砕法)や連邦公有地リースを禁止した場合の米国経済への影響に関する報告書を発表した。米国の石油ガス生産の95%はフラッキングで行われ、石油採掘の25%、天然ガス採掘の14%は石油ガス開発企業にリースされた連邦公有地で行われている。11月の大統領選に向けて、バーニー・サンダース連邦上院議員(バーモント州)ら民主党候補者の一部は、水圧破砕の禁止、化石燃料企業への連邦公有地リースの禁止を公約に掲げているが(2019年11月27日付地域・分析レポート参照)、こうした措置は米国経済に多大な影響を与えるとしている。
報告書によると、フラッキングの禁止、連邦公有地や連邦オフショアでの石油ガス採掘リースの禁止に踏みきった場合、2020~2030年のGDPは累積で7兆1,000億ドル失われ、石油ガス産業への依存が大きいテキサス州やカリフォルニア州、フロリダ州、ペンシルベニア州、オハイオ州の5州を中心に、2030年までに合計360万人の雇用機会が失われるとしている。
さらに、米国エネルギーブラック ジャック 勝率局(EIA)の「2019年次エネルギー見通し(AEO)」と比べて、2030年には米国内の石油生産は日量800万バレル、天然ガスは9億立方フィートまで落ち込む。このため、石油の国内需要の40%以上を輸入に、天然ガスの同30%を依存することになり、その結果として2030年までに貿易赤字は累積で3兆1,000億ドルに拡大するとしている。
また、家庭のガソリンや電力などエネルギー支出額は年平均618ドルだが、国内の石油天然ガス供給が減少するため、2030年までに家庭用の天然ガス価格は58%、ガソリン価格は15%、電気料金は20%、灯油価格は15%それぞれ上昇するとみる。さらに、エネルギーコストの上昇により、小麦農家は64%、トウモロコシ農家は54%、大豆農家は48%、それぞれ生産コストの上昇に直面し、農家所得は43%落ち込むと試算している。
(木村誠)
(米国)
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