政府が2022年までの経済予測を発表、地方自治体の財政上の課題も示す
(スウェーデン)
ロンドン発
2020年02月03日
スウェーデンのマグダレーナ・アンデション財務相は1月16日、2022年までの経済予測を発表した。財務相は、貿易摩擦が輸出に悪影響を及ぼし、世界情勢の不透明性が投資意欲を減退させているものの、政府は公的債務を削減して福祉の財源を積み上げており、節約策なしでも経済停滞に対処できるとコメントしている。
GDP成長率は、2019年は前年比1.1ポイント減の1.1%で、2020年も同じく1.1%の予測だが、内需の回復が見込まれることから、2021年に1.6%、2022年に1.9%と上昇に向かう見通しだ(表参照)。経済停滞の兆候は労働市場でも顕在化しており、政府によると、労働人口は増加しているものの、需要減退が失業率を押し上げているとした。ただし、20~64歳までの雇用率はEU内では最高の水準となっている。また、1月21~24日の世界経済フォーラム年次総会(通称:ダボス会議)で発表された社会的流動性(注)に関する報告書は公平な賃金や社会保障、労働環境や生涯を通した学習など労働者に関する各国の状況を評価し、スウェーデンは82カ国中4位としている。国内経済は世界の貿易対立や地政学的な不透明性を受けて低迷しつつあるものの、労働環境としては高い評価を受けている。
アンデション財務相はまた、1940年代生まれの世代が高齢者人口を押し上げるとともに、ベビーブームだった1990年代生まれの世代が親となることで、高齢者福祉や児童福祉、医療を担当する地方自治体の財政負担が増加していることも課題として挙げた。政府は地方自治体に2014~2018年までの期間、350億クローナ(約3,850億円、1クローナ=約11円)を拠出した。2019年1月の与野党合意を受けてさらに200億クローナの拠出が決まったものの、地方自治体の負担をさらに軽減するため、2020年4月に発表する予算案に向けて、与野党で予算割り振りについて協議中だとしている。
(注)社会的階層の移動のしやすさを意味し、これが低い場合、生まれ育った家庭が属する社会階層に縛られる度合いが高くなる。
(三瓶恵子)
(スウェーデン)
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