新型コロナウイルス拡大で、世界最大のモバイルイベントMWCが中止
(スペイン)
マドリード発
2020年02月14日
世界最大級の携帯通信関連イベント「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」の主催者GSMAは2月12日、スペイン・バルセロナで同月24~27日に開催予定だった同イベントの中止を決定した。主要出展企業をはじめ20社以上が出展見送りを表明したことを受け、「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大や渡航などに対する世界的な懸念の高まりにより、開催は不可能」と発表した。同時開催のスタートアップイベント「4YFN」も中止となる。
スペイン政府は中止に遺憾の意を表明し、「スペインの公衆衛生上の理由ではない(別の原因による)と考える」と強調した。保健省によると、スペイン国内の感染者は離島部の2人のみで、いずれも症状は出ていない。中国武漢からの帰国者も2週間の隔離期間を経て13日に陰性が確認されて退院しており、保健省は感染者がスペインに入国する可能性はそれほど高くないとみている。
当地報道では、2月11~14日にオランダ・アムステルダムで開催中の業務用AVシステムインテグレーション見本市「ISE」との対比が注目された。ISEもテクノロジー分野で来場者数8万人、出展企業1,300社と大規模な展示会だが、ほぼ例年どおりの活況と報じられている。GSMAはMWCの中止の決め手となった要因として、イベントの目玉でもある各社の経営トップ級が次々と参加を辞退してしまい、来場者数10万人超、出展企業2,400社と世界最大規模のイベントの体をなさなくなったことを挙げている。
地元経済に打撃、GSMAへの賠償請求の可能性も
MWCが地元バルセロナにもたらす経済効果は約5億ユーロとされ、イベント中止はホテルや外食産業、タクシー、イベント運営業などに大きな経済的損失をもたらす。出展者やサプライヤーから主催者GSMAへの多大な返金要求や賠償請求も予想される。GSMAは「中止は不可抗力によるもの」として、賠償には応じない構えを見せているが、世界保健機関(WHO)は現時点では世界的な大流行ではないとしてパンデミック宣言には至っておらず、中国外の人やモノの移動が制限されていない中、「不可抗力」が成立するかどうかが争点となりそうだ。
(伊藤裕規子)
(スペイン)
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