日EU米3極、WTO補助金ルール強化の具体策を提言

(EU、日本、米国、世界)

ブリュッセル発

2020年01月16日

米国ワシントンで1月14日、第7回3極貿易相会合が開催された。共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)には、WTOの補助金ルールを強化するための方策として、禁止すべき補助金の類型をリスト化するなど、具体的な提案が盛り込まれた。

日本の梶山弘志経済産業相、EUのフィル・ホーガン欧州委員(通商担当)と、ロバート・ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表が会合に出席し、共同声明に合意した。3極貿易相会合の実施は、2019年5月にフランス・パリでOECD閣僚理事会の機を捉えて開催されて以来となった。

欧州委員会は同日のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「WTOの構造的な改革と、国際貿易における公平な競争条件の確保は、ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長下の新欧州委員会における優先課題の1つだ」と強調。ホーガン欧州委員は「共同声明は、国際貿易を歪曲(わいきょく)する幾つかの根幹的な課題に取り組む上で重要な前進となる。EUは、多国間での交渉がこうした課題を解決するために効果的であり得ることを一貫して主張してきた。米国と日本がこの見解を共有する事実を歓迎する」とコメントした。

禁止されるべき補助金の類型をリスト化

共同声明では、産業補助金に関して、既存のWTOルールを強化する方策を提言している。まず、WTO補助金協定に規定される禁止補助金(輸出補助金、および国内産品を優先して使用することに基づいて交付される補助金)は不十分だとして、以下の補助金が無条件に禁止される必要があると提言した。

  1. 際限のない保証
  2. 信頼できる再建計画のない破産またはその危機にある企業に対する補助金
  3. 過剰能力の分野または産業における独立の民間資本から長期の資金または投資を調達することができない企業に対する補助金
  4. 一定の債務の直接的な免除

2019年5月の第6回会合の共同声明では、産業補助金の規律強化について「テキストベースでの3極での作業を完了させる努力を継続する」との表現にとどまっていたが、今回、禁止すべき補助金の具体的な類型について3極の閣僚間で一定の合意に達した意義は大きい。ただし、これらは網羅的なリストではなく、今後も規律強化に向けた作業を継続することで一致した。

そのほか、過度に大規模な補助金などの特定の補助金は、それを交付する国が貿易や供給能力への著しい悪影響がないことを立証する責任を負うこと、などが提言された。

欧州委のプレスリリースでは、「共同声明が、6月にカザフスタン・ヌルスルタン(旧称アスタナ)で開催される第12回WTO閣僚会議に向け、幾つかの課題を解決する上での重要な前進となる」と締めくくっている。

(安田啓)

(EU、日本、米国、世界)

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