2020年4月から最低賃金を引き上げ
(英国)
ロンドン発
2020年01月09日
英国政府は2019年12月31日、法定最低賃金を2020年4月1日から引き上げることを発表した。25歳以上のフルタイムの労働者を対象とする最低賃金(NLW)は年間930ポンド(約13万3,000円、1ポンド=約143円)の増加となり、24歳以下の若年層の労働者が対象の最低賃金もおしなべて引き上げられる。政府によると、今回の引き上げにより、300万人近い労働者が恩恵を受けることになるという。
2016年4月に導入されたNLWは、現行の1時間当たり8.21ポンドから8.72ポンドに引き上げられ、導入開始以来最高の6.2%の引き上げとなる(表参照)。
政府は、NLWを2020年までに収入の中央値の60%まで引き上げるという目標に順調に近づいているとしている。また、政府は2019年9月に、経済状況が堅調であればNLWを2024年までに収入の中央値の3分の2にまで引き上げる方針を示しており、10.5ポンドまで上昇すると予想している。
さらに、NLWの導入により、最低賃金労働者の賃金上昇率は過去20年間で最速となっており、2015年4月から2018年4月にかけての25歳以上の賃金上昇率はインフレ率を8ポイント上回っていることも示した。
政府はNLWの対象年齢について、2021年から23歳以上、その後5年以内に21歳以上に適用範囲を拡大する方針も発表している。これにより約400万人の24歳以下の低賃金労働者の収入が増加するという。与党・保守党は2019年12月の下院総選挙での公約でも、NLWの水準引き上げや適用範囲拡大を掲げており、今回の引き上げはその実現に向けた第一歩となる。適用範囲が拡大された場合、恩恵を受ける約400万人の24歳以下の労働者の年間収入は2024年までに平均4,000ポンド増加すると試算する。
ボリス・ジョンソン首相は、勤労に励む労働者がそれに見合った賃金を受け取っていない状況を止めるとしており、NLW引き上げにとどまらず、今後5年間で賃金水準全般を引き上げるとコメントしている。政府は2020年春までに将来に向けた政策フレームワークを固めていく予定だ。
(木下裕之)
(英国)
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