消費回復と経済活性化に向け給与引き上げが可能に
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2020年01月07日
12月21日に可決された社会連帯・生産性回復法(法律第27541号として12月23日付官報で公布)には、消費喚起を促す目的で、以下も盛り込まれている。
- エネルギーシステムが緊急事態に陥っていることから、一般世帯および企業に対し、ガスおよび電気の公共料金を180日間凍結する。政府は、1年間にわたってこれら公共サービスの監督機構に介入できる権限を持つ。
- 定年退職金受給者に対して、2019年12月と2020年1月にそれぞれ5,000ペソ(約9,000円、1ペソ=約1.8円)のボーナスを支払う。12月18日付「エル・クロニスタ紙」によると、定年退職受給者約570万人のうち、最低受給額1万4,068ペソを受け取っている約270万人がボーナスの対象となる。しかし、1万9,068ペソ以上の退職金を受け取る定年退職者に対しては、インフレ率に沿って受給額が変動する既存の受給額設定プログラムを180日間延期する方針が定められた。このほかに、政府は、四半期ごとに退職金額の増加を設定することができる。
- 低所得層向け児童養育手当(通称AUH:Asignación Universal por Hijo)の対象者は約400万人と想定され、2019年12月と2020年1月にそれぞれ2,000ペソのボーナスが支払われる。
- 政府は、民間企業における従業員給与の引き上げを義務付けることができる。引き上げ額に対して社会保障負担金は課されず、労働組合との賃上げ交渉の際にも引き上げ額は加味されない。引き上げ額は現時点で定められていないものの、2020年1月から分割して合計6,000~9,000ペソの引き上げが想定されている。
また、国家社会保障機構(ANSES)は、全国の低所得層約200万人向けに、1世帯当たり4,000ペソ~6,000ペソ分の食料とノンアルコール飲料の購入に利用できる「食料カード」を配付する予定。金額は1世帯当たりの子供の数によって異なる。
現地民間エコノミストらは、社会連帯・生産性回復法により、2020年の歳入はGDP比1.5ポイント、約60億ドル相当の増加が見込まれ、社会連帯・生産性回復法が施行されなかった場合、財政赤字はGDP比約3ポイントとなる見込みだったと説明している(「クラリン」紙2019年12月22日)。
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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