歴史上初のロ中ガスパイプライン「シベリアの力」開通
(ロシア、中国)
欧州ロシアCIS課
2019年12月12日
ロシア極東から中国東北部へ天然ガスを輸送するパイプライン「シベリアの力」の稼働が始まった。両国をつなぐ天然ガスパイプラインの開通は初めてで、12月2日に行われた開通式には、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席がテレビ会議形式で参加した。
「シベリアの力」は、サハ共和国(ヤクーチヤ)南部のチャヤンダ鉱区(埋蔵量1兆2,000億立方メートル)からアムール州都ブラゴベシチェンスクを経由し、中国東北部にガスを輸送するもの。パイプラインの総延長距離は2,200キロ。2014年5月にガスプロムと中国石油天然気集団(CNPC)が年間380億立方メートルの天然ガスを30年間供給する売買契約を締結し、2014年9月1日に建設が開始された。2022年には、イルクーツク州にあるロシア最大規模のガス田のコビクタ鉱区(埋蔵量2兆7,000億立方メートル)とチャヤンダ鉱区をつなぐ約800キロのパイプラインも開通する。
「シベリアの力」が通過する地域は、冬季にマイナス62度にも達する厳しい気候条件下にあり、山岳地帯や地震帯、永久凍土帯、湿原などでもあるため、世界の最先端の技術・設備を用いており、ガスを輸送するパイプには減摩コーティングや防食保護、断熱性を高める技術が施されているロシア国産製品を使用している。
アムール州スボボドヌィ市近郊では、天然ガスに含まれるヘリウムやブタン、プロパン、ヘキサンを抽出する工場を2021年の稼働開始を目指して建設中だ。完成すれば、年間処理能力420億立方メートルに達する世界有数の規模のガス処理工場となる。
テレビ会議形式の開通式に参加したプーチン大統領は「今回の歴史的な出来事はロ中2カ国だけでなく、世界のエネルギー市場にとっても非常に重要。ロ中のエネルギー分野の戦略的協力を質的に新しい段階に引き上げるもので、2国間貿易額を2024年までに2,000億ドルまで拡大させる目標の達成に近づくもの」と評価した(ロシア大統領府発表12月2日)。
習国家主席は「中ロ関係の発展が両国の優先外交政策となっており、今後もその方針に変わりはない。ガスパイプラインは両国関係の深化と相互に有益な協力例として機能する」と述べた。一方で、習国家主席はガスパイプラインの管理・運用について、安全性と信頼性の確保を第1とすること、低炭素、省エネなど環境に配慮した資源開発を行うこと、ガスパイプラインが通過する地域の社会経済発展を促すことなどについて注文をつけた。
(齋藤寛)
(ロシア、中国)
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