スウェーデンの太陽電池製造企業、スイスの重電大手ABBと工場のスマート化で提携

(スウェーデン、スイス)

ロンドン発

2019年11月20日

スウェーデンで太陽電池(注)セルの製造を手掛けるエクセジャー(Exeger)は11月19日、スイスの重電大手ABBと自社工場のスマート化に係る提携を開始することを発表した。この提携により、エクセジャーのストックホルム工場の太陽光発電材料の製造品質が向上することに加え、エクセジャーが計画する最新の完全自動化工場の建設に向けたソリューションを開発するとしている。

エクセジャーは色素増感太陽電池(DSSC)と呼ばれる次世代太陽電池を製造する企業で、2014年に生産を開始した。DSSCは低照度環境で発電できることや、柔軟なデザイン設計が可能なことに優位性がある。パートナーとなるABBのウェブサイトでも、エクセジャー独自の特許技術により建物内部の人工光でも発電が可能なことや、より長期間の家電の電池寿命が期待できる点などが評価されている。また、2019年3月にはソフトバンクが同社に1,000万ドルを出資し、9月には出資額を倍増したことを発表している。

写真 ブラック クイーン ブラック ジャック太陽電池セル(同社提供)

エクセジャーの太陽電池セル(同社提供)

エクセジャーとABBとの提携には3つの柱がある。まず、ABBがエクセジャーの既存工場にロボティクスと自動化技術を提供して生産効率性を高める。2つ目として、ABBがエクセジャー担当の技術者チームを構成し、エクセジャーが国内で計画する新工場の建設をサポートする。完全自動化された工場となる予定。3つ目の柱は、ABBが将来的に自社製品にエクセジャーの太陽電池セルを組み込むための可能性評価を行う。これが実現すれば、自社や顧客の環境負荷低減に貢献できるという。具体的な事例としては、同社のセンサーへの太陽電池セルの組み込みを挙げている。

提携発表でABBは「クリーンエネルギーへの需要の高まりの中で、イノベーションによって世界のクリーンエネルギーへの転換に貢献するための明確な目標を持つ企業の支援への関心を高めている」とコメントしており、ABBの技術によってエクセジャーの新工場の年間生産能力は現在の工場と比べ、最大で10倍に増大するとしている。

(注)太陽など光エネルギーを吸収して電気に直接変えるエネルギー変換素子。

(篠崎美佐、木下裕之)

(スウェーデン、スイス)

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