欧州委、2020年の経済予測を下方修正

(EU)

ブリュッセル発

2019年11月08日

欧州委員会は11月7日、秋季経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、2019~2021年の各年のEU28カ国の実質GDP成長率を1.4%と横ばいで推移すると予測した。5月の春季経済予測(2019年5月8日記事参照)から2019年は据え置き、2020年は0.2ポイントの下方修正(表1参照)となった。一方、ユーロ圏については、2019年は1.1%(0.1ポイント下方修正)、2020年は1.2%(0.3ポイント下方修正)、2021年も1.2%とした(表2参照)。

表1 EU28カ国の経済の見通し

米中貿易摩擦により投資・製造業・貿易が減速

2019年は、スロバキア(3.8%→2.7%)、ラトビア(3.1%→2.5%)などユーロ圏の小国の予測値が大きく引き下げられた一方、非ユーロ圏のハンガリー(3.7%→4.6%)やルーマニア(3.3%→4.1%)は大幅に上方修正された。2020年は、スロバキア(3.4%→2.6%)を筆頭に、大部分の加盟国で下方修正された。

欧州委は、米国と中国の貿易摩擦をはじめとする世界貿易の不確実性が投資と製造業、貿易の勢いを失わせ、グローバルな製造業の脆弱(ぜいじゃく)性が短期的に継続、その結果、2019年第2四半期(4~6月)に減速したEU経済も短期的な回復は見込めないとした。ただし、安定した労働市場と容易な資金調達環境に裏打ちされた手堅い内需に加え、一部加盟国の支援的な財政がEU経済を支える状況になると分析。全加盟国で経済成長が続くが、域内の経済活動だけでは力強い成長の実現には不十分だとした。

表2 各国の実質GDP成長率見通し

欧州委によると、EUの2019年の失業率を6.3%(春季経済予測から0.2ポイント下方修正)、2020年を6.2%(据え置き)と予測(表3参照)。ユーロ圏については、それぞれ7.6%(0.1ポイント下方修正)と7.4%(0.1ポイント上方修正)とした。2021年について、EUは6.2%、ユーロ圏は7.3%と予測。雇用創出は減速するものの、サービス部門への雇用のシフトなどにより、失業率は引き続き改善するとの見通しを示した。

表3 各国の失業率予測

欧州委は、経済の下振れ要因として、(EU離脱に伴う)EU・英国間の(将来の)通商関係や英国経済の減速のほか、貿易や地政学的な緊張関係の激化、中国をはじめとするグローバル経済の一層の減速に言及。また、域内向け産業に対する製造業低迷の波及効果が予想以上に拡大する可能性もあるとした。一方、上振れ要因として、貿易摩擦の早期解決や、財政余力のある加盟国がより拡張的な財政スタンスをとれば成長の拡大が期待されるとした。

(村岡有)

(EU)

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