第4次産業革命で1,820万人が失業の恐れ、米コンサル会社が試算
(フィリピン)
マニラ発
2019年10月21日
米国経営コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーは10月2日、フィリピンでロボットやデータ分析、人工知能(AI)などの導入によって第4次産業革命が進んだ場合、1,820万人の雇用に影響が出るという試算を発表した。
マッキンゼー東南アジア社長のカウシック・ダス氏は、現在のフィリピン国内の仕事の40%から50%は産業のオートメーション化の影響を受けるとした。最も影響を受けるとされた農林水産業は、既存の1,250万人の仕事の48%に相当する600万人の仕事が影響を受けるとされた。農林水産業の仕事の大半が身体活動によるものであることを理由に挙げた。次に影響が大きいのは小売・卸売業で、既存の740万人の仕事の46%に相当する340万人の仕事が影響を受けるという。3番目は製造業で、既存の390万人の仕事の41%に相当する160万人の仕事が影響を受けるとしている(図参照)。
マッキンゼーはさらに、フィリピンの低い平均賃金が企業によるテクノロジーへの投資や導入を遅らせており、第4次産業革命の進行は他国よりも遅れるとした。フィリピン国内の銀行のITに投じる予算は3%から4%であり、他の東南アジア諸国の平均の7%から8%に比べて極めて低い割合となっている。
ただし、産業自動化のためのソフトウエア導入の進展は、多額の資金が必要となるロボットの導入に比べて早いとされる。例えば、ライドシェア大手のグラブとウーバーのフィリピンにおける売り上げが国内の大手タクシー会社5社の合計売り上げを超えるのにかかった時間はわずか2年だった。
マッキンゼーは、フィリピン政府は第4次産業革命の進行に備えて産業界と緊密に連携し、労働者の雇用を守るとともに、生産性の向上を図る必要があるとした。
フィリピン政府でデジタル化を所管するハイパーブラックジャック通信技術省の2020年度予算は9月末に上院で承認され、全体予算326億3,000万ペソ(約685億円、1ペソ=約2.1円)の大半がデジタルインフラ整備に利用される。同省は2022年までに全国10万カ所以上の公共施設、公共エリアで無料Wi-Fiを提供するとしている()。
(坂田和仁)
(フィリピン)
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