変革を意識した2020~2022年の新経済プログラムを発表

(トルコ)

イスタンブール発

2019年10月17日

トルコ政府は9月30日、2020~2022年の「新経済プログラムPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。ベラト・アルバイラク国庫・財務相は、トルコが2018年8月のトルコ危機および世界経済の下振れリスクからの調整回復に成果を収めているとし、同プログラムを「変革の始まり」と位置付けた(添付資料の表1、2参照)。

インフレ抑制、プラス成長、雇用創出を見込む

同相は、インフレ率が期待以上に改善しているとし、2019年の目標を15%から12%に下方修正した。また、2022年には5%以下を達成できるとした。インフレ鈍化は消費の回復につながるとし、経済成長も2019年は0.5%の成長にとどまるが、2020年からの3年間は5%の安定成長を期待していると述べた。これにより、年間100万人以上の新規雇用が創出され、失業率が徐々に改善すると主張した。

同相は、失業者拡大の多くが建設業界の不振によるものだとし、消費者向けローン環境を改善し、建設業界の回復に注力するとした。また、急拡大している、米ドルやユーロ、金などによる資産防衛「ドル化」の進行に歯止めをかけるべく対策を講じること、さらに税制を収入レベルに応じて再編、平等化するとし、増税を示唆している。なお、毎年更新される最低賃金の引き上げ率は、これまでの実勢でのインフレ調整から、インフレ目標での調整(2020年は目標の8.5%)に変更となる。

二分する経済界の評価

政府の経済プログラムに対して、財界はおおむね好意的に捉えている。当地日刊紙などでは、経常赤字や高インフレに対する政府の調整は成功裏に進んでいるとの論調がほとんどだ。一方、イスタンブール工業会議所(ISO)のエルダル・バフチュバン会頭は、経常赤字を縮小させるためには質の高い投資を支援するべきだと、政府の建設セクター重視にくぎを刺している。

他方、ネットなどで散見されるエコノミストらの評価は、野心的な目標設定に対する具体策に欠け、金利の引き下げによる設備投資の誘発や景気刺激策などに依存する「目標ではなく希望」であるなど、その実現性に疑問符を投げかけるものが多い。具体的には、銀行の不良債権処理問題についての対応不足のほか、輸入中間財への依存が高い産業界で、経常赤字(輸入超過)を縮小させ、成長の加速化させることの矛盾に対する説明がないことを批判している。

(中島敏博)

(トルコ)

ビジネス短信 f2806864b43ebcd6