デジタル・イノベーション分野での課題と可能性を議論

(ロシア、CIS、日本)

モスクワ発

2019年10月31日

モスクワ近郊のテクノパーク・スコルコボで2019年10月21~23日に、デジタル経済・スタートアップのイベント「オープンイノベーションズ2019」が開かれた。2日目に開催された全体会合には、ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相、ベラルーシのセルゲイ・ルマス首相らが出席。ロシアCIS地域におけるデジタル経済化の進展や関連する企業育成・ビジネス分野への波及状況のほか、政府から見た課題などに関し議論が行われた。

ロシアCIS諸国の政府関係者は、社会・経済のデジタル化の進展により、経済が成長しビジネスも拡大しているとしつつ、a.サイバーセキュリティーへの対応、b.ロボットや人工知能(AI)の活用などによる生産効率化と労働の関係、c.デジタル化の進展と法規制、d.ユーラシア経済連合内での社会・経済のデジタル化に関する共通規則の創設、などが現在の課題との認識を示した。

メドベージェフ首相は、スマートフォンの一般的な使用などにより、あらゆるものがデジタルプラットフォーム上でつながっていると指摘。より便利で快適な生活の実現や社会構築にデジタル化が資する一方で、個人オンライン ブラック ジャック保護やサイバー攻撃などへの対応策の準備が重要とした。ウズベキスタンのアブドゥラ・アリポフ首相は、同国でのサイバー攻撃が増加傾向にあると述べ、取り締まりのために70以上のさまざまな法規を組み合わせていることを紹介した。

ユーラシア経済委員会のチグラン・サルキシャン評議会議長は、現在の地域経済統合の流れの中で共通の法制度整備が進む現状を踏まえ、ユーラシア経済連合加盟国でもデジタル経済化に関する共通の制度を構築することが重要だ、との考えを示した。具体的には、製品マーキングを含むトレーサビリティーの確立、デジタル技術を活用した域内流通網の整備を進める必要性などに言及した。

全体会合以外では、多様なセッションやスタートアップによるピッチも行われた。日本関係では、ロシアNIS貿易会が主催のオンライン ブラック ジャック「日本とロシア テクノロジー投資の可能性」と題した、2つのセッションが設けられた。

オンライン ブラック ジャックでは、参加した日本企業が自社の活動概要を紹介し、ロシア企業向けにアピールを行った。特に、ドローンによる測量や検査サービスを提供するテラドローンは、既にカザフスタンなどロシアの近隣国で活動をしていること、ロシアも同社が得意とする分野の鉱山開発や遠隔地での点検などで商機があるとして、ロシア市場に対する高い関心を示した。

「日本とロシア テクノロジー投資の可能性」では、両国の参加者から、a.今後のイノベーション、デジタル協力で期待したい分野、協力可能な分野、b.ベンチャーファンドの設立を含む資金面での協力の可能性などについて、それぞれの立場から意見が述べられた。

(梅津哲也)

(ロシア、CIS、日本)

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