議会総選挙で環境系政党が躍進

(スイス)

ジュネーブ発

2019年10月28日

スイス議会の総選挙が10月20日に行われた。緑の党が獲得議席を約2倍に増やして躍進した。気候変動など昨今の環境問題への注目度の高まりを受けた結果と考えられる。緑の党の閣僚が誕生するかが注目される。

スイスの議会は全州議会(上院、46議席)、および国民議会(下院、200議席)から成り、総選挙は4年ごとに行われる。

国民議会の各党の得票率は以下のとおり(かっこ内は前回2015年の得票率との比較)。

  • スイス国民党(SVP):25.6%(3.8ポイント減)
  • 社会民主党(SP):16.8%(2.0ポイント減)
  • 急進民主党(FDP):15.1%(1.3ポイント減)
  • 緑の党(GPS):13.2%(6.1ポイント増)
  • キリスト教民主党(CVP):11.4%(0.2ポイント減)
  • リベラル緑の党(GLP):7.8%(3.2ポイント増)

今回の大きな特徴は、環境系の2政党の躍進だ。緑の党が13.2%を得て勢力を伸ばし、全党の中で4番目となった。リベラル緑の党の7.8%は2007年の結党以来最大となった。

スイス連邦参事会(内閣)の7人の閣僚は、1959年以来、紆余(うよ)曲折はありながらも、議会を構成する上位4党が2:2:2:1の割合でポストを配分するのが慣習となってきた。現在は国民党、社会民主党、急進民主党、キリスト教民主党出身者が閣僚を務めている。今回、緑の党がキリスト民主党を上回り、緑の党の閣僚が誕生するかが焦点になる。

ドイツ語圏の地元紙「NZZ」(10月22日付)は、選挙用オンラインプラットフォーム「スマートボート(注)」の各当選者の政策を分析し、スイスの施策の行方を予測した。それによると、特に環境問題や社会的トピックで変化がみられる。環境保護を重視する政党の躍進により、二酸化炭素(CO2)の排出削減、公共交通機関の利用を促進する施策がより推進されるとしている。また、これまで国民党など右派政党が懸念を示してきた男性の育児休暇取得の促進、保育園の増設、同性婚・同性カップルによる子供の養子縁組の合法化についても議論が進むと予測している。

(注)2003年から活用されているプラットフォーム。各トピックに関する共通の質問に候補者が回答した結果をオンライン上で公開し、投票者の政策理解を促進する。

(城倉ふみ、マリオ・マルケジニ)

(スイス)

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