新燃料測定基準の本格導入から1年、新車登録台数が持ち直し
(スペイン)
マドリード発
2019年10月15日
スペイン自動車工業会(ANFAC)の10月1日の発表によると、9月の乗用車新車登録台数は前年同月比18.3%増の8万1,751台となり、5カ月ぶり、実質的には1年ぶりに前年同月比でプラスに転じた。ただ、1~9月の累積でみると、前年同期比7.4%減の96万5,339台だった。
新車登録台数は、2018年9月の新燃費測定基準(注)の本格導入の直前に駆け込み登録が急増した後、4月の季節的要因による微増を除き、マイナスで推移し続けてきた(添付資料参照)。
消費者は燃費規制への不安で買い控え
1~9月の販路別の内訳を見ると、登録台数の半数近くを占める個人向けの需要の弱さが際立っている(表1参照)。
スペイン自動車販売協会(ANCOVE)は10月1日、この弱含みは景気減速も一因だが、「化石燃料車に関する政府の方針に一貫性がなく、唐突なディーゼル車通行禁止への懸念が消費者の間に広がり、様子見の状態となったことが大きい」と分析した。
社会労働党(PSOE)の現政権は、2040年までに商用車以外の全ての新車のCO2排出量をゼロにする取り組みを行うとの意向を示しているが、政権の不安定によって具体的な規制法の成立には至っていない。地方レベルでは、島しょ部のバレアレス州のほか、マドリードやバルセロナなどの大都市で化石燃料車両の乗り入れ規制が導入されているが、その内容は各地で異なっている。また、マドリード市の例にあるように、その時々の政権の意向で二転三転することもあり、消費者の混乱を招いている(表2参照)。ANFACは、自動車全体の需要低下に歯止めをかけるには、環境対応車への移行などを通して平均車齢を下げる断固とした措置が必要だと述べている。
代替燃料車としてのオートガス車が人気上昇
燃料別の新車登録シェアを見ると、代替燃料車のシェアの拡大傾向が見て取れる(表3参照)。代替燃料車で最もシェアが大きいのはハイブリッド車(HV、登録台数全体の10.3%)で、ガス燃料車〔オートガス(LPG)と天然ガス、2.6%〕、電気自動車(EV、1.0%)、プラグインハイブリッド(PHV、0.7%)と続く。
特に、ガソリン車にLPG用タンクを追加設置するバイフューエル式のオートガス車は、EVやHVに比べ安価で、都心の規制地区も通行できるエコ車扱いとなるため、登録台数が大幅に増えている。LPGスタンド網も全国670カ所に拡大しており、代替燃料車の現実的な選択肢の1つとなっている。
(注)2018年9月以降、新車登録される全ての車に対して、従来の燃費測定方法の「新欧州ドライビングサイクル(NEDC)」から、実走行状態により近い計測結果が得られる「国際調和排ガス・燃費試験方法(WLTP)」での測定による基準適合を求められるようになった。
(伊藤裕規子)
(スペイン)
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