原発の新規建設や再稼働プランに反対の声、法やインフラの未整備を指摘

(フィリピン)

マニラ発

2019年10月24日

フィリピン上院エネルギー委員会のガチャリアン委員長は10月7日、ドゥテルテ大統領がロシアのプーチン大統領と10月3日に首脳会談を行った際に、ロシアが海上浮遊型の小型原子力発電所の建設や、休眠中のバターン原子力発電所の稼働を含む幾つかの原発建設プランをフィリピン側に提案した()点について、法やインフラの未整備を理由に反対すると主張した。

ガチャリアン委員長は、フィリピンには原子力発電所の開発や放射性廃棄物の処理を規定する法律が存在しないとした上で、「政府に対して、原子力発電所の建設や運営に関しては細心の注意と事前の対策、そして何よりも包括的な原子力エネルギー法の制定が不可欠と警告した」と、地元メディアに説明した。

一方で、フィリピン原子力研究所(PNRI)のアルシラ所長は、基本的にはガチャリアン委員長と同じ意見だとした上で、「ルソン島のエネルギー供給の40%を占めるマランパヤ・ガス田が2024年までに枯渇することを踏まえて、フィリピンが原子力エネルギーの平和利用について再考する時期が来ている」と、地元メディアに説明した。

フィリピンでは、2018年の第17次国会において、原子力エネルギーの規制枠組み法案が提出されたが、下院の第3次公聴会、上院の第2次公聴会で承認されないまま閉会した。PNRIのアルシラ所長は、原子力エネルギーの法整備のためには、2001年に成立した電力産業改革法を改正し、原子力発電所の建設を規定する条項を盛り込む必要があるとした。

ドゥテルテ大統領は、ロシアから帰国した際に行った10月5日の記者会見において、原子力エネルギーの活用に向けた可能性を追求するように政府閣僚に伝えたと説明した。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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