モスクワ市、PPPを活用し外国製医療装置の調達を計画

(ロシア)

モスクワ発

2019年10月29日

在ロシア米国商工会議所(Amcham)が10月14日、モスクワでモスクワ市政府による投資環境説明会を開催した。この中で市投資庁のレオニド・コストロマ長官が市政府の官民パートナーシップ(PPP)事業の取り組みと投資誘致策を説明し、外国製医療装置を調達する計画を明らかにした。

モスクワ市ではPPP事業を積極的に進めており、2013年から2019年9月までの事業累計規模は9,000億ルーブル(約1兆5,300億円、1ルーブル=約1.7円)を超える。

PPPのスキームの1つで、モスクワ市が取り組むコンセッション契約(注)の一例として、現在建設中のクツゾフスキー大通り北バイパスを挙げた。モスクワ市が実施する初のコンセッション契約で、市内初の有料道路となる。政策金融機関のVEB.RFやガスプロムが出資する投資会社リーデルなどが設立した特別目的会社ノーバヤ・コンツェシオンナヤ・カンパニヤが受注、2021年に完成させる予定だ。投資規模は650億ルーブル。これ以外にコンセッション契約を活用し、地下鉄2番線のレチノイ・バグザール駅と7番線のスホデンスカヤ駅をつなぐ連絡道路の整備で入札を実施中のほか、今後、地下鉄と近郊電車間の乗り換え施設整備も行う予定だ。

モスクワ市では、製品の納入・保守管理・修理などを一括で発注するライフサイクル契約というスキームを活用し、地下鉄やバス車両の調達も実施している。今後、MRI検査装置などの大型医療装置もライフサイクル契約で調達する計画で、2019年内に入札を実施することを明らかにした。コストロマ長官にジェトロが聞いたところ、「(調達する医療装置は)外国製を想定している。既に日系を含む大手医療機器メーカーと協議を始めている」と語った。

モスクワ市における投資額は順調に伸びており、2018年の固定資本投資は前年比15.3%増、2019年上半期も前年同期比19.5%増となった。コストロマ長官は投資誘致策の1つとして「オフセット契約」を挙げた。企業がロシア国内で投資を行い、生産を行う条件で、国または自治体が製品を公共調達で一定程度買い上げることを保証するものだ。2016年に法律が改正され、このスキームが導入された。企業は最低10億ルーブルの投資が求められ、契約期間は最長で10年間とされる。

モスクワ市ではオフセット契約の締結が2例ある。いずれも製薬分野で、ビオカドと、三井物産が一部出資するRファルムの子会社Rオプラが締結した(表参照)。

表 モスクワでのオフセット契約事例

コストロマ長官によると、3例目のオフセット契約案件の入札が始まっており、2019年末までの契約締結を目指している。ノーボスチ通信(10月14日)へのインタビューでは、対象製品はストーマ(人工肛門や人工膀胱)関連の医療製品と述べた。

(注)所有権を国・自治体に残したまま、民間事業体が運営を担う形式の契約。国・地域によって定義内容は多少異なる。

(浅元薫哉、エカテリーナ・セミョノワ)

(ロシア)

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