英国政府、合意なき離脱に備え通関・物流対策をさらに強化

(英国、EU)

ロンドン発

2019年10月16日

英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる英国とEUの交渉が大詰めを迎える中、英国政府は引き続き、10月31日に合意なき離脱(ノー・ディール)となる可能性に備えた取り組みに全力を挙げている。

歳入関税庁(HMRC)は10月15日、ノー・ディールとなった場合に導入するとしている「移行簡易手続き(TSP)」について、これまでに自ら登録した3万社超の事業者に加えて、HMRC側で新たに9万5,000社を自動登録したことを発表した。同手続きは、EUから英国に物品を輸入する事業者が利用できるもので(3月26日記事参照)、離脱から6カ月後の2020年4月30日までにEUから輸入した物品については、5月4日まで補足申告が猶予される。

HMRCによる自動登録は、2019年8月に事業者登録・識別(EORI)番号未登録企業8万8,000社に同番号を付与した()のと同じく、事業者自らの登録が進んでいないことが背景にある。同庁は10月15日の発表で、TSPに登録した9万5,000社は、付加価値税(VAT)登録されており、2018年にEUから物品を輸入した記録が同庁にある英国企業だとしている。しかしHMRCは、ノー・ディール時の影響を評価した報告の中で、EU加盟国のみと取引のある英国の事業者を24万5,000社と推計。このほかにVAT登録をしていない小規模事業者やEU域外と域内の両方から輸入している事業者も多数存在することを考えれば、今回の自動登録はEUから物品を輸入する全事業者を網羅したものではなさそうだ。同報告では、EUとの間で通関手続きが必要となることで、年間2億1,500万件の通関申告が新たに発生すると推計しており、このうち、かなりの割合は輸入申告だという。通関時の混乱を回避できるかは、TSPを導入してもなお不透明だ。

ノー・ディール時でも国境付近の幹線道路の交通を確保するため、ハイウェイズ・イングランド(交通管理局)は10月11日、南部ケント州の高速道路M20の暫定運行計画「オペレーション・ブロック」の最新版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表している。大陸欧州に向かう7.5トン以上の重量貨物運搬車両(ローリー)について、ユーロトンネル経由とドーバー港経由に分けて渋滞の状況により4段階の交通規制を行うもので(関連ブラック ジャック やり方)、これにより小型貨物車や乗用車も影響を受ける。同局は導入作業のため、10月26日夜から27日朝にかけてM20のジャンクション7から9の間を閉鎖し、10月28日午前6時に発動する予定としている。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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