欧州委、サムスンSDIに対するハンガリーの国家補助の調査開始
(EU、韓国、ハンガリー)
ブリュッセル発
2019年10月16日
欧州委員会は10月14日、ハンガリー政府が韓国のサムスンSDIに対して供与する計画の1億800万ユーロ相当の国家補助について、EUの国家補助ルールに照らしてその妥当性に疑義があるとして、調査を開始した。
サムスンSDIは、2017年5月30日にハンガリーのグドゥ(ブダペスト北郊約25キロ)に電気自動車(EV)用電池生産拠点の竣工(しゅんこう)を発表、同年12月から拡張工事を行っている。ハンガリー政府は、同社による追加(拡張)投資に対して1億800万ユーロ相当の公的支援を行う旨を2018年中に欧州委に通知していた。
「低開発地域における投資支援に該当するか」などの観点で調査
サムスンSDIのグドゥ事業所(敷地面積33万平方メートル)(2016年9月27日記事参照)はEV用電池(年産5万基)の最新鋭の生産ラインをもち、韓国の蔚山(ウルサン)、中国の西安の同社拠点と並ぶ、EV用電池の主力生産拠点と位置付けられている。サムスングループのテレビ生産拠点を再開発したグドゥ事業所の竣工式には、オルバーン・ビクトル首相も出席するなど、ハンガリー側の期待も強い。ハンガリー投資促進庁(HIPA)は10月10日付の発表で、同事業所における追加投資の総額は約12億ユーロで、新たに1,200人相当の雇用創出効果が見込まれるとしている。
しかし今回、欧州委のマルグレーテ・ベスタエアー委員(競争政策担当)は、EU加盟国による国家補助が認められる条件として「低開発地域における企業投資を促進するために必要で、最小限であること」を指摘しており、本件がこの条件に適合するかどうかが焦点となる。欧州委は特に、「地域開発のための国家補助に関するガイドライン(2014~2020年)」(2014年7月1日施行)が定める「公的支援による投資インセンティブ効果」などの基準に、ハンガリー政府のサムスンSDIに対する国家補助が準拠しているか、現段階で「疑いをもっている」と明言している。
欧州委は今後、ハンガリーを含む利害関係のある第三国に対し、同措置への意見募集の機会を設けるとしている。
(前田篤穂)
(EU、韓国、ハンガリー)
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