栄養失調による経済損失がGDP3%の45億ドル、子供の3割が発育不良
(フィリピン)
マニラ発
2019年10月31日
国連児童基金(ユニセフ)は10月16日、フィリピンの栄養失調による経済損失がGDPの3%に当たる年間約45億ドルに上り、フィリピンの子供の30.3%が発育不良の状態にあると発表した。
ユニセフの栄養スペシャリストのレネ・ジェラルド・ガレラ氏は地元メディアに対して、45億ドルの経済損失は、2013年11月の台風ヨランダ(台風30号)による経済損失の3分の1に相当し、フィリピン政府は栄養失調を取り除き、経済成長を持続させるためにも10億ドルの対策費を投じるべきだと説明した。
国家経済開発庁(NEDA)の長官を務めたエコノミストのシエリト・ハビト氏は、現在の子供たちが栄養失調によって生産的な労働者になることができなかった場合、今後2050年代まで続くとされる人口ボーナス期にフィリピンは経済成長の恩恵を受けるどころか、人口ボーナスは人口時限爆弾(demographic time bomb)にもなり得ると警鐘を鳴らした。
世界銀行が2018年に発表したヒューマン・キャピタル・インデックス(HCI)ランキング(注)で、フィリピンは157カ国中84位となった。世界銀行は、フィリピン政府の子供たちに対する人的資本投資の割合が極めて低く、これが発育不良問題につながっているとした。世界銀行はさらに、フィリピン政府の中期計画「フィリピン開発計画(PDP)」に定められているとおりの政策を政府が実行すれば、HCIは2022年までに現在の高所得国と同等の水準に向上し、フィリピンのGDPは現在より36%増加するとした。
(注)世界各国の子供達が18歳になるまでに得られる知的、技術、健康といった人的資本(ヒューマン・キャピタル)を指数化したもの。
(坂田和仁)
(フィリピン)
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