アマゾンがアルゼンチンにデータセンター設立を計画

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年10月10日

10月4日付「クロニスタ」紙をはじめ複数のメディアによれば、電子商取引大手アマゾンが、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスから南西635キロほどにあるバイアブランカ市およびその郊外3カ所に、同社のクラウドサービスである「アマゾンウェブサービス(Amazon Web Services)」のデータセンター設立を計画している。広さは100ヘクタールほど。投資総額は8億ドルに及び、連邦政府やブエノスアイレス州との最終調整を経て数週間以内に正式発表される、と報じられている。

アマゾンは、南米南部の新たなデータセンター候補地として、アルゼンチンとチリに絞り込んでいたとされ、2018年上半期ごろから両国による誘致合戦が行われてきた。投資の決め手になったのは、2020年1月から施行予定の知識経済振興法(法律27506号)とされる。同法の恩典の中には、2029年末まで税制が変更されることなく安定を保証するともに、従業員の社会保障コストの削減や所得税を15%と定めることなどが含まれる(外資に関する奨励参照)。アルゼンチンにおける法人税は、2019年末まで30%、2020年以降は25%だ。また、データセンターは国内に14あるフリーゾーンのうちの1つに設立されることが予定されているため、同施設内で消費される電力などにかかる付加価値税が免除されるなどの恩典も期待できる(法律24331号)。

マウリシオ・マクリ政権では、産業の多角化の一環として、サービス産業振興に向けた法整備や誘致活動を行ってきた。その中でも、2019年6月に公布された知識経済振興法の成果として、今回のアマゾンの投資計画を、マクリ大統領には大統領選挙終盤における支持層獲得の後押し材料にしたい意向があるとされる。

10月3日付のブルームバーグによれば、アマゾンウェブサービスによって現地企業のコスト削減やデータの速度改善が見込まれる。アルゼンチンには、南米最大の電子商取引(EC)プラットフォーマーのメルカドリブレや大手オンライン旅行会社のデスペガール・ドット・コムなど、IT分野で同国発ユニコーン級企業が存在する。今後の同分野の産業振興にもつながることが期待されている。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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