トルコは西バルカンの安定に注力、セルビアで3カ国首脳会談

(トルコ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ)

イスタンブール発

2019年10月17日

トルコのエルドアン大統領は10月8日、セルビアを訪問し、トルコ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナの3カ国首脳会談に出席した。同大統領は、9日のベオグラード~サラエボ間のハイウエー建設起工式典で、トルコ企業による投資が3カ国の政治的融和にも寄与すると強調した。

ハイウエーがつなぐのは、経済だけでなくバルカン半島の安定

ベオグラードで行われた3カ国首脳会談後の共同記者会見でエルドアン大統領は、各国国民の融和という点において同会談が極めて生産的な役割を果たすとし、次回は2020年5月にサラエボで、その次はトルコで開催し、3カ国による対話メカニズムを継続的なものにすると述べた。

3カ国の首脳は、ベオグラードの西約80キロのスレムスカ・ラチャ(Sremska Rača)で行われたベオグラード~サラエボ間のハイウエー建設起工式典に出席した。建設はセルビア側で始まるが、ボスニア側では2018年10月の総選挙後、3民族の代表からなる大統領評議会がNATO加盟の是非などの主要課題で合意できず、新政府が発足していないことから、計画が準備段階にとどまっている。この計画に、トルコ政府は30億ユーロの融資を約束しており、トルコのタシュヤプ(Taşyapı)建設が請け負うことになる。

セルビアでは、同国を重点市場と位置付けるタシュヤプ建設が、2018年にノビ・パザル(Novi Pazar)~トゥティン(Tutin)間の道路補修、ニシュ(Niš)、ブラニェ(Vranje)での386軒の住宅プロジェクトを受注しているほか、コリン(Kolin İnşaat)、エピック(Epik İnşaat)、ユクセル(Yüksel İnşaat)などのトルコ建設系企業が住宅や商業施設の建設などで活動している。

ボスニア・ヘルツェゴビナでは、内戦後にモスタールの石橋(世界遺産)再建を実施したヤプ・メルケジのほか、ジェンギス(Cengiz İnşaat)が、ブラコボ(Vlakovo)~レペニカ(Lepenica)、レペニカ~スホドル(Suhodol)、スホドル~タルチン(Tarčin)の道路(スマートハイウエー)建設を2014年に完工。ジェンギスはコリンとのコンソーシアムで、これからもボスニアでの入札案件に積極参入するとしている。

トルコのゼネコンは、ユーラシア、中東、アフリカで積極的な事業展開を行っているが、西バルカン諸国では、EU加盟に向けた支援を背景とするEU、資金力がある中国との競合に腐心している。このため、大規模プロジェクトへの参入は、住宅、道路インフラなどに限定される傾向がある。他方、政治的な影響力が大きく、付加価値の高いインフラ案件で、日本企業などとの連携に期待する声も大きい。

(中島敏博)

(トルコ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ)

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