和紙を使ったフラワーアレンジメントで、新規市場の創出を目指す

(ルーマニア)

ブカレスト発

2019年09月09日

ルーマニアで、和紙を用いたペーパーフラワーの販売・レンタル21 トランプを立ち上げた船津亜矢子氏(ナツコインターナショナル代表取締役)に、起業のきっかけや今後の展望について聞いた(9月2日)。

船津氏は、1995年に初めて旅行でルーマニアを訪問し、ルーマニアの自然と親しみやすさに魅了されて2000年に同国へ移住した。その後、旅行会社や日系製造業などで約18年勤務したが、「ルーマニアで、花を使ったアートを21 トランプにしたい」という強い思いから、2018年8月にナツコインターナショナルを設立した。日本で生花によるフラワーアレンジメントの経験があった同氏は、21 トランプの立ち上げを前に、ペーパーフラワーの技術を学ぶため、日本と米国で経験を積んだという。

作品は、高さ50センチの小型なものから、70~120センチの中型のものまで、顧客の要望やロケーションに合わせて1つ1つ手作業で制作される。イベント開催時などに数カ月単位でレンタルできるほか、購入することも可能だ。価格帯はアレンジメントのタイプにもよるが、レンタルで月450レイ(約1万1,250円、レイは通貨単位レウの複数形、1レウ=約25円)から、販売で200レイから2,400レイまでと幅広い。「オフィス・受付・イベント用のペーパーフラワーの販売や、レンタルサービスを核とした法人向け21 トランプを軌道に乗せたい。ルーマニアで主流の生花の代替品として、和紙を用いたペーパーフラワーを広めていきたい。」と、船津氏は意気込む。

船津氏は2018年10月から本格的な活動を始めたが、とりわけ新規顧客開拓に苦労したという。メールや電話でのプロモーションは効果が薄く、複数のSNSを活用して継続的に作品の紹介を続けた。それらの投稿が地元のイベント会社の目に留まり、法人イベントの内装を手掛ける会社とのコラボレーションにこぎつけた。それにより、イベントを取材に来たメディアが関心を持って、テレビや雑誌で多数取り上げられるようになったという。「メディアの宣伝効果は絶大で、現在は大半の注文が、テレビ、雑誌、SNSでの継続的な作品紹介の影響によるものだ。今はイベント会社4社のほか、日系企業、ルーマニア企業、個人の顧客と仕事をしているが、まだまだ顧客開拓はこれからだ」と、市場開拓に意欲をみせる。

「ルーマニア国内でもフランス系メーカーなどから材料となる紙を調達することはできるが、種類が少ない。現在は、米国製の紙と日本製の和紙を組み合わせて使用している。最も重要な材料である紙は、色や材質を実際に見て選ぶ必要があることから、今後フランスやイタリアなどの周辺国で直接買い付ける予定。和紙は、柄や厚みが最適な、和紙かわ澄(株式会社川澄)から購入している。日本でしか入手できないが、種類の豊富さには代えられないため、引き続き購入の予定」とのことだ。また、ルーマニアのアートデザイン市場について、船津氏は「新しいものを取り入れることに抵抗が少なく、また、日本文化への敬意が厚く好感度が高い。ルーマニアには潜在的な市場がある」とみている。

ルーマニアでは、先行して認知されている「オリガミ」と「ペーパーフラワー」との違いがまだ理解されていないという。船津氏は「和紙で作るペーパーフラワーによって、日本のアートを普及させるとともに、ルーマニアで新しい21 トランプとして市場を確立していきたい」と今後の展望を語った。

写真 船津氏の作品(同氏提供)

船津氏の作品(同氏提供)

(山本千菜美)

(ルーマニア)

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