日米首脳が貿易交渉で合意、包括的な協定に向け協議継続
(米国、日本)
ニューヨーク発
2019年09月26日
安倍晋三首相とドナルド・トランプ米国大統領は9月25日(米国時間)、国連総会が行われているニューヨークで、日米2国間の貿易協定の合意内容を確認する共同声明に署名した。8月の首脳会談でも示されていたとおり(関連ブラック ジャック オンライン)、農産物、工業製品、デジタル貿易について両国間の貿易を活性化させる内容となっている。両首脳は早期発効に向けて、協定への署名とそれぞれの国内手続き完了を目指す。両国は包括的な貿易協定の締結を目指して、2020年4月をめどに第2段階の協議を開始する予定だ。
自動車・同部品への232条追加関税、協定履行中は発動せず
ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表によると、米国の自動車関税は今回の合意には含まれない。また、1962年米国通商拡大法232条に基づく自動車・同部品の輸入に対する制限措置に関しては、安倍首相が「今回も共同声明の内容が日本の自動車・自動車部品に追加関税を課さない趣旨であることは私からトランプ大統領に明確に確認をし、トランプ大統領もそれを認めた。私とトランプ大統領の間で確認できている」としている(ロイター9月25日)。共同声明は「日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない」と明記している。
また、内閣官房TPP等政府対策本部、経済産業省の発表によると、自動車・同部品に対して数量制限、輸出規制などの措置を課すことはない旨を閣僚間で確認した。
農産物、工業製品、デジタル貿易の分野で両国市場を開放
ホワイトハウスが直後に発表したファクトシートによると、今回の合意に基づき、日本は約70億ドルに上る米国の農産品輸出に対して市場開放を行うとしている。記者会見でも、トランプ大統領は今回の協定が米国の農家、畜産業者にとって大きな利益をもたらすと強調した。USTRがより詳細な貿易協定の概要と、農業部分の概要を発表しており、要点は下表のとおり(ファクトシートの全容は添付資料参照)。また、日本側は内閣官房TPP等政府対策本部、経済産業省、農林水産省がそれぞれ所掌分野について、合意内容の概要および詳細を発表している(表参照)。
産業界は合意を評価するも、包括的な協定を実現すべきとの声も
今回の合意発表を受けて、米国食肉輸出連合会(USMEF)や全米豚肉生産者協議会(NPPC)、米国小麦協会、全米トウモロコシ生産者協会(NCGA)など米国の農業関連団体はそれぞれのプレスリリースで、日米合意を歓迎する声明を発表している。農業州の知事、連邦議員もトランプ政権の交渉を評価している。主要な牛肉生産州であるネブラスカ州のピート・リケッツ知事(共和党)は25日付の声明で、「牛肉州にとっては大きな勝利だ」としている。同州選出で米下院の日本部会の共同議長も務めるエイドリアン・スミス下院議員(共和党)も、「米国の農業界にとって偉大な勝利だ」とし、「日本部会の共同議長として、日米関係の将来に期待しており、この関係が生み出す利益と成功を目にすることを心待ちにしている」との声明を発表した。
他方、米国商工会議所は声明で今回の合意を評価しつつも、トランプ政権に対して「日本との間でサービス、知的財産権の保護、規制障壁などを含んだ優先的な通商課題に対処するために、包括的で高い水準の貿易協定を実現すると約束したことを守るよう強く求める」と、さらなる交渉を呼びかけた。
(磯部真一)
(米国、日本)
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