日米租税条約、15年ぶりに改正
(米国、日本)
ニューヨーク発
2019年09月09日
日米両政府は8月30日、日米租税条約の改正議定書を発効させるための批准書を交換した。改正案は両国政府が2013年1月に署名した後、日本の国会では同年6月に承認されていた。米議会上院では2019年7月17日に批准を承認した。今回の批准書交換により、署名から6年を経ての発効となった。日米租税条約は2004年以来15年ぶりの改正となる。
改正の要点は、(1)源泉地国免税の拡大、(2)相互協議手続きにおける仲裁制度の導入、(3)徴収共助(注1)の拡充の3点だ。
(1)について、まず、配当への免税に関しては、従来は持ち株割合が50%超で保有期間が12カ月以上の場合に認められていたが、11月からは、持ち株割合が50%以上で保有期間が6カ月以上であれば免税が認められる。利子にかかる税に関しては、従来は10%が課税されていたが、同月から原則免税となる(注2)。米国に投資している日本企業にとっては、米国で払った利子への税を日本の法人税額から差し引く手続きを省力できるため、資金管理や事務負担が軽減される。米国の税制に詳しい専門家は、配当に関しては、今回のルール改正が米国に投資している日本企業に恩恵をもたらす事例は短期では限定的だが、利子の免税は規模を問わず多くの企業にプラスの影響があるとみている。
(2)に関しては、条約に適合しない課税について、両国税務当局の協議により2年以内に解決しない場合、納税者の要請に基づき、第三者で構成される仲裁委員会の決定で事案を解決する制度が導入される。専門家は、主に規模の大きな移転価格のケースで利用される可能性があるとみている。
(3)については、これまで徴収共助は条約乱用(注3)の場合に対象範囲が限定されていたが、今後は滞納租税債権一般にも対象が拡大される。両国当局間の協力の下、租税債権の取り立てを国外居住者に対しても厳格に行うことになる。
米上院は日米との租税条約の改正とともに、スペイン、スイス、ルクセンブルクとの2国間租税条約の批准も承認した。これらに対しては、ランド・ポール上院議員(共和党、ケンタッキー州)が、米国納税者の機微なブラック ジャック コツが流出する恐れがあるとの理由で長年反対していた。ミッチ・マコーネル上院院内総務(共和党、ケンタッキー州)が審議に踏み切った背景には、米産業界の働き掛けがある。米商工会議所は6月20日、上院外交委員会に宛てたレターで、先述の4カ国に、米上院で2国間租税条約案の批准承認待ちのハンガリー、ポーランド、チリを加えた7カ国の企業について、「全米50州に1兆2,000億ドルを超える投資をしており、数十万の米国民の雇用がそれらの国との貿易・投資関係によって直接的、間接的に支えられている」として、早期の批准承認を求めていた。
(注1)相手国の租税債権の徴収を相互に支援する制度。
(注2)これまでも金融機関は免税が認められていた。なお、改正のポイントに関しては日本の財務省の解説ページも参照。
(注3)条約締約国でない第三国の居住者が不当に条約の特典を得ようとする行為など。
(磯部真一)
(米国、日本)
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