閣僚級の米中貿易協議は目立った成果なく終了、次回は9月上旬に

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年08月01日

米国ホワイトハウスのステファニー・グリシャム大統領報道官は7月31日、中国の上海で7月30、31日に行われた閣僚級の米中貿易協議に関する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。それによると、両国は技術の強制移転、知的財産権、サービス産業、非関税障壁、農業に関して協議し、中国側が米国の農産品の購入を拡大することを確約したとしている。会合は建設的だったとし、両国は9月上旬にワシントンで交渉を継続する見通しだと明らかにした。

今回、ロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とスティーブ・ムニューシン米財務長官が中国側の劉鶴副首相や鍾山商務相らと交渉した。両国が貿易に関して会合を持つのは、6月29日にトランプ米大統領と習近平・中国国家主席が大阪で首脳会談を行って以来(2019年7月1日記事参照)初めてで、閣僚級協議としては5月上旬にワシントンで開催して以来(米中合意できず、ブラック ジャック)となる。米中首脳会談では中国が米国の農産品購入を拡大することで合意したとされ、今回の協議でそれを追認したかたちとなるが、時期や購入額などの詳細は明らかになっていない。首脳会談で米国が緩和するとしていた華為技術(ファーウェイ)への米国製品の輸出禁止措置に関しては、声明では触れられていない。

トランプ米大統領は今回の協議が行われていた最中の7月30日、自身のツイッターで、中国は2020年の米大統領選挙で民主党候補が勝つことを待つつもりだとした上で、「もし私が選挙で勝ったら、今以上に厳しい交渉になるか、交渉自体がなくなるかだ。われわれが全てのカードを持っている」と発言していた。米国のメディアや有識者も、中国が交渉に時間をかける戦略を取ったとの見方をしている。「ウォールストリート・ジャーナル」紙(7月31日)は「貿易協議の緩やかな進展は中国の新たな待つ戦術の結果」と題した記事の中で、「北京は、交渉に前向きであると見せつつ、早まった譲歩をしないことで、より良い成果を得られると考えている」との中国専門家の見方を紹介している。トランプ政権に対中政策の助言を与えている米ハドソン研究所のマイケル・ピルズベリー上席研究員もフォックス・ビジネスニュースのインタビュー(7月31日)で、「中国はパニック状態から立ち直った」と評し、トランプ大統領が指摘するとおり、中国は民主党候補が大統領選挙で勝つことを待つ戦略を取っているとの見方を示した。その理由として、「中国が恐れていたほど中国からの投資の引き揚げなどはなく、中国は米国と比べれば3倍の速度で経済が成長している」と分析した。

(磯部真一)

(米国、中国)

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