米FRB、10年7カ月ぶりに政策金利の引き下げを決定
(米国)
ニューヨーク発
2019年08月02日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は7月30~31日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を2.25~2.50%から2.00~2.25%に引き下げることを決定した(図参照)。利下げが行われるのは2008年12月(0.75ポイントの引き下げ)以来、10年7カ月ぶり。今回の決定は、8対2の賛成多数だった。反対票を投じたのは、カンザスシティー連銀のエスター・ジョージ総裁とボストン連銀のエリック・ローゼングレン総裁で、政策金利の誘導目標を2.25~2.50%に維持することを主張したとされる。
パウエル議長は記者会見で、「米国経済の見通しは依然として良好」だが、「世界的な成長鈍化や貿易政策の不確実性などによる(経済)見通しの下振れリスク」を防ぎ、「インフレ率が2%の物価目標へより早期に回帰することを促す」ための措置だとした。また、その意味で「リスク管理的な視点に立った、やや保険的」な利下げだと述べた。
パウエル議長は連続的な利下げの始まりではないと強調
FOMCの声明によると、米国経済全般の判断について、労働市場は依然として力強く、経済活動は「緩やかなペースで拡大している」とし、前回の表現(2019年6月21日記事参照)をほぼ変えなかった。金融政策の判断について、「世界経済の動向が経済見通しに与える影響と物価上昇圧力が抑制されている点を考慮」した利下げだとし、リスク管理的な措置であることを強調した。また先行きについて、「(経済)見通しに関する不確実性は残っている」とし、前回の「高まっている」という表現を「残っている」に修正した。
記者会見でパウエル議長は、今回の措置が「基本的に(景気)サイクル中盤(midcycle)における政策調整といった性質」を帯びており、「長期にわたる連続的な利下げの始まりではない」と述べた。一方で、利下げは「1回だけとは言っていない」とも指摘し、必要に応じて「全てのツールを積極的に使う」とした。
米国投資会社PGIMの債権部門チーフエコノミストであるネイサン・シート氏は「FRBは景気動向におおむね満足しているものの、(先行きの)リスクを心配し、インフレ動向を心配している」と述べた(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版7月31日)。一方で、トランプ大統領は7月31日、ツイッターを通じて、マーケットがパウエル議長とFRBから聞きたかったのは「長くて積極的な利下げサイクルの始まり」といった言葉で、「いつものように、パウエル議長は私たちを失望させた」と述べた。
なお、今回のFOMCでは、2017年10月から開始したFRB保有資産規模の縮小(2017年9月26日記事参照)についても、当初の想定より2カ月早い2019年7月末に終了させることを決定した。
(権田直)
(米国)
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