VISA、ハイパーブラックジャック

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年08月09日

ロシアでは、レストランやカフェで食事する際に、注文金額の10%程度のチップを会計の時に店員に渡すことが一般的だが、VISAカードは7月31日、チップの支払いをキャッシュレスで行えるサービスを発表した。

ロシア主要経済紙「ベドモスチ」(7月31日)によると、VISAによる今回のサービスは、大手カフェ・ベーカリーチェーン「フレブ・ナスシチヌィ」のモスクワ市内の店舗に(試験的に)導入されたもの。ロシアでクレジットカードのアクワイアリング(加盟店業務)に携わる中堅銀行ルスキー・スタンダルト(RS)がVISAのパートナーになっている。

VISAロシア法人によると、流れ・仕組みは次のとおり。a.来店客が店舗で支払いをする際、店員がクレジット処理端末機で支払総額を提示し、その際に、店員が来店客に対しチップ金額を提案する。b.来店客が支払った食事代とチップの合計額を、来店客の持つクレジットカードから1回で引き落とす。c.チップは店員の電子財布に送金され、アクト(業務完了書)が発行される。

店員が口座上でチップを受け取るためには、店員がRSで個人アカウントを作成し、RSの「チップサービス」に加入する。その上で、電子財布を作成し、これを自身の銀行口座とひも付けることが必要となる(任意の銀行キャッシュカードが使えるが、VISA機能がついているものが前提)。RSは店員が保有するカード(口座)への送金の際に手数料を徴収する。RSアクワイアリング部長のインナ・エメリヤノワ氏は「手数料は5%程度を想定している」と述べている。本サービスの利用の際、特定のアプリのダウンロードや、スマートフォンによる銀行口座アプリを開設する必要はなく、クレジット処理端末機のみで処理が可能な点がメリットだ。

「フレブ・ナスシチヌィ」デジタルマーケティングディレクターのアレクセイ・パノフ氏は「当チェーンでは、キャッシュレスでの支払いが年々増加しており、現時点で7割に達している。来店客の手持ち現金が少ない場合、チップをもらえないことが多い」とし、本サービスに期待を示した。エメリヤノワ氏は「レストランだけでなく、美容室やホテルにも導入したい」と語っている。

ロシアでのレストラン・カフェ向けのキャッシュレス・チップ支払いサービスの導入は、VISAが初めてではない。最大手行ズベルバンクが過半出資する携帯アプリ「プラジウス」は、他社に先駆けて本サービスを2016年に開始したが、キャッシュレス・チップ支払いの際、来店客の携帯にアプリをダウンロードする必要があること、注文時点でチップ払いを確定しなければならない点がネックとなっていた。店側の問題もある。2年前からレストラン向けにキャッシュレス・チップ支払いソリューションを提供しているIT企業エボトルは、来店客がチップのパーセンテージを選択できる端末を開発したが、店側での設定が必要のため、これまでサービスが普及しなかった、としている。

(齋藤寛)

(ロシア)

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