気候変動に関するパリ協定、ロシアも批准へ
(ロシア、世界)
欧州ロシアCIS課
2019年07月17日
ロシアが気候変動に関するパリ協定を批准する見込みだ。天然資源・環境省は7月8日、連邦政府に対して、批准に関する勧告を行ったと発表した。21 トランプに2016年4月に署名していたものの、批准作業が進んでいなかった。
パリ協定は、2015年12月の第21回気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された、2020年以降の温室効果ガス排出削減など気候変動抑制に関する多国間協定だ。1992年に採択された国連気候変動枠組み条約の全加盟国が参加する国際枠組みで、産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満に保ち、加えて、平均気温上昇1.5度未満にすることを目指すもの。現時点で、全加盟国197カ国のうち185カ国が批准しており、主要国で批准していないのは、トルコ、ロシア、協定を離脱した米国のみだ。
21 トランプで規定された目標達成に向け、2030年までに温室効果ガス排出量を、森林による吸収量を加味した上で、1990年比で25%以上削減しなくてはならない。経済発展省のミハイル・ラスストリギン次官は、今回の批准手続きに当たって、世界的な気候変動が先進国の非炭素発展モデルへの移行、再生可能エネルギーへの投資拡大をもたらし、グリーンエネルギー活用国で生産された製品の競争力が向上している状況に鑑み、主要輸出産品が石油、天然ガス、石炭などの炭化水素資源であるロシアも国家経済の発展や国家利益の保護という観点から、低炭素経済・社会を考慮せざるを得なくなっていると説明している(「コメルサント」紙7月9日)。
批准に向けた作業を進めるため、アレクセイ・ゴルデエフ副首相は7月5日に天然資源・環境省に対して、外務省とともに9月1日までに連邦政府に対して批准に関する連邦法を提出するよう指示。プーチン大統領も6月28、29日に開催されたG20大阪サミット(首脳会議)で、近いうちにパリ条約に批准すると発言していた。ロシア政府は9月23日にニューヨークで開催される国連事務総長による気候変動サミットの際に批准について発表するとみられている。
120カ国1,300以上の気候変動に関するNGOを束ねるドイツに拠点を置く国際団体「クライメート・アクション・ネットワーク」のタシーム・エソップ臨時代表は「ロシアは中国、米国、EU、インドに次ぐ温室効果ガスの5大排出国・地域の1つ。ロシアの批准はパリ協定の目的達成のために非常に重要なステップであり、残された未批准国に対する肯定的なシグナルとなる」と述べた(「コメルサント」紙7月9日)。
(齋藤寛)
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