米中首脳会談に注目集まる、G20大阪サミットに関する米国メディア報道

(米国、中国、北朝鮮、サウジアラビア、ロシア)

ニューヨーク発

2019年07月03日

米国主要メディアは、6月28、29日に開催されたG20大阪サミット(首脳会議)について、トランプ大統領がこの機会に行った各国首脳との会談内容を中心に報道した。中でも、追加関税の発動の有無が注目されていた米中首脳会談に関する報道が目立った。いずれのメディアも、貿易摩擦の一時停戦を評価する姿勢を示しつつも、根本的な解決は当面先になるとみている。

「ウォールストリート・ジャーナル」(WSJ)紙は6月30日付の記事で、トランプ大統領と習近平国家主席は貿易交渉の再開にこぎつけたが、多くの課題を残したと報じた。トランプ政権に政策的な助言を与えているとされるハドソン研究所のマイケル・ピルズベリー氏による「習氏とトランプ氏ともに、支持を取り付ける必要のある基盤を抱えている対称的な状況にある」とのコメントを引用し、習氏は中国共産党内の対米強硬派を、トランプ氏は超党派となっている議会の対中強硬派に加えて、2020年の大統領選挙を見据えてビジネス界や農業州を無視できないと指摘している。

米中間ではファーウェイ問題が議論の焦点

また、いずれのメディアも、トランプ大統領が発表した華為技術(ファーウェイ)に対する輸出規制の緩和について、今後も賛否の議論が続くとしている。経済誌「ブルームバーグ」のコラムニストであるティム・カプラン氏は7月1日付の記事で、規制緩和に踏み切ったトランプ氏の判断は「水面下で起きている技術面での冷戦を止めることはない上に、ファーウェイは政治的な人質以上の存在だとしてきた米国のスタンスを弱めてしまう」と指摘した。

北朝鮮、サウジアラビア、ロシアの首脳との会談にも着目

米中関係以外では、各紙によって着目する案件が若干異なるものの、トランプ大統領と(1)北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長、(2)サウジアラビアのムハンマド皇太子、(3)ロシアのプーチン大統領との会談に関する報道が集中した。

(1)は板門店で6月30日に行われ、2月にベトナムのハノイで開催された第2回米朝首脳会談が不調に終わって以降、初の会談として各メディアがトップ記事で取り上げた。「ニューヨーク・タイムズ」紙は30日付の記事で、「任期を半分以上終えた中で、トランプ氏は(北朝鮮との)長年の紛争を解決し自らのレガシーにすることで、来年の選挙の弾みにする考えだ」と評している。

(2)については、トランプ大統領が、2018年10月にトルコで発生したサウジアラビア人記者カショギ氏の殺害を指示した証拠があるとして厳しい立場に立たされているムハンマド皇太子を積極的に擁護する姿勢を見せたことに関して、政治紙「ポリティコ」は6月29日付記事で、「トランプ氏はカショギ氏殺害に関する記者の質問を無視して、皇太子を称賛し続けた」としている。

(3)では、2016年の米国大統領選挙にロシアが介入したとされる点に関して、トランプ大統領がプーチン大統領に対して、「選挙に介入しないように」と伝えたことが大きく報道された。その発言が記者からの質問が相次ぐ騒々しい中で軽快に出たことを批判的にみる向きもある。「USAトゥデー」紙は6月28日付の記事で、「トランプ氏は相変わらず、米国の安全保障を犠牲にしてプーチン氏を満たしている」と評したオバマ政権時の駐ロシア米国大使のマイケル・マクフォール氏のツイッターでの発言を紹介している。

(磯部真一)

(米国、中国、北朝鮮、サウジアラビア、ロシア)

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