「ノードストリーム2」への制裁法案、米国産ガスの輸出拡大が狙い
(ロシア、米国、ドイツ、欧州)
欧州ロシアCIS課
2019年06月18日
米国のジョン・バラッソ上院議員(共和党)は6月13日、ロシアからバルト海底を通過しドイツに天然ガスを輸送するパイプラインの第2弾である「ノード・ストリーム2」(以下、NS2)の建設に制裁を科す法案「欧州同盟国とのエネルギー安全保障協力法(退避法)」を提出したと発表した。
同議員は法案提出の目的を、NATO加盟国をロシアによる政治的威圧・操作から遠ざけ、関係国のエネルギー安全保障を強化することとする。その一方で、同上院議員のウェブサイトでは、自身が選挙区とするワイオミング州などを含む米国産天然ガスの欧州への輸出拡大の狙いが強調されている。欧州への天然ガス輸出のライバル国に対する牽制という側面もあるとみられ、欧州企業を含むNS2関係者からは反発の声が上がっている。
今回の退避法案における制裁対象は次のとおり。法令制定以降に、a.ロシア政府およびロシアの国営・国有企業(以下、ロシア勢)が行うロシアのエネルギー輸出パイプラインの建設、b.ロシア勢が支配するパイプラインの建設・近代化・修理のメンテナンスを容易にする製品・サービス・技術などの提供、c.パイプライン建設に伴うロシア勢の能力の向上に寄与する販売、リース、投資などを、意図的に行う者で、これらの行為の市場価格が100万ドル以上、12カ月の合計額が500万ドル以上の場合。
違反者には、「敵対者に対する制裁措置法」(CAATSA)セクション235にリスト化されている項目(銀行送金、為替取引、投資、米国・国際金融機関による与信供与、米国政府による輸出ライセンス発給などの禁止・制限など)のうち、5項目以上が課されるとされている。
本法案に対し、NS2のチーフプロジェクトオフィサーであるヘニング・コーテ氏は「NS2は純粋な商業プロジェクトで、欧州に安価な天然ガスを供給するもの」と反論。ワシントンにある国際金融研究所のチーフエコノミストであるエレーナ・ルィバコワ氏は、建設中止は既に時遅しとした上で、「米独関係に物議を醸すもの」と批判している。なお、NS2建設プロジェクトには、スイスのオールシーズグループやイタリアのサイペムなどのパイプライン敷設大手をはじめとする、627社の企業が参画している(ドイツ紙「DW」6月13日)。
(齋藤寛)
(ロシア、米国、ドイツ、欧州)
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