経済区の個人所得税優遇措置が打ち切りに

(ベトナム)

ハノイ発

2019年06月26日

ベトナムで経済区に入居している企業に付与されていた、個人所得税50%減税の優遇が取り消される運びとなった。

ベトナムでは政令29号(29/2008/ND-CP)により、経済区内の労働者は個人所得税が50%減税されるという優遇制度が設けられていたが、政令29号を改正するかたちで2018年7月10日から施行された政令82号(82/2018/ND-CP)では、この優遇制度の規定が削除された。政令82号には、改正前に与えられていた優遇の移行措置にかかる規定が設けられていないため、同政令施行以前に投資認可を受けていた企業の優遇も取り消されるのかが焦点になっていた。

この事態を受け、在ベトナム日本大使館やベトナム日本商工会議所は、ベトナム政府に対して、改正以前に恩典を享受していた企業に対する措置を除外すべく、要望書を提出するなど働き掛けを行ってきた。

しかし、2019年5月28日付でベトナム財政省から在ベトナム日本大使館宛ての回答文書が発出され、政令29号で設けられていた優遇措置は、政令29号が施行された2018年7月10日に遡及(そきゅう)して取り消されることとなった。これに先立ち,ハイフォン経済区を管轄する税務署からは、過去に優遇を受けていた企業も同政令施行以降は優遇が取り消されることになる旨の公文書が一部対象企業に送付されていた。

ベトナムでは、投資法第13条第2項に基づき、新たな法令によって従前に享受していた投資優遇措置より不利な投資優遇措置を規定する場合、残りの優遇措置享受期間中は、従前の優遇措置の適用が認められる旨が規定されている。ただし、同投資法で規定している投資優遇措置は、法人税、原材料などの輸入関税、地代、土地使用料、土地使用税に限定されており、上記規定の適用は個人所得税には及ばないとの解釈が可能となっており、混乱を来している。

ジェトロの調査によると、ベトナム進出日系企業の69.8%が「事業拡大」を検討する一方、48.2%が「法制度の未整備・不透明な運用」、40.2%が「税制・税務手続きの煩雑さ」を投資リスクとして回答している。ベトナムは引き続き投資先として注目されているが、恩典が移行期間なく撤回されたり、当局間での解釈の齟齬(そご)が生じたり、想定外のリスクもあるため、在ベトナム日本大使館からも注意喚起外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますがされている。

(庄浩充)

(ベトナム)

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