デンソーはモントリオールの一貫したエコシステムに期待、カナダのAI分野
(カナダ)
トロント発
2019年06月25日
ジェトロは6月11日にトロントで開催した「カナダIT投資・イノベーションセミナー」のパネルディスカッションの中で、デンソー・インターナショナル・アメリカのシニア・バイスプレジデント、田中裕章氏に人工知能(AI)の研究開発拠点としてモントリオールを選んだ理由について話を聞いた。同社は1月、カナダ・モントリオールにAIイノベーションラボを開設している(2019年1月16日記事参照)。
(問)なぜカナダのモントリオールに拠点を開いたのか。
(答)弊社にとって、今後重要となる技術の1つがAIだと考え、AIの基礎研究が盛んなカナダを選択した。AIは出力結果を出すまでの経緯がブラックボックスであることが多く、自動車の制御分野に応用した時に、出力を保証できない可能性がある。そこで、AIの出力結果の性格をしっかりと解明する必要があると考え、研究組織とスタートアップの協力体制があり、研究から製品化まで一貫したエコシステムがあるモントリオールを選んだ。
(問)カナダで大学と共同研究するに当たって、日本との違いはあるか。
(答)日本では、大学との連携は、どちらかというと課題を丸投げして、結果を聞くというやり方が多く見受けられる。私は、(米国の)シリコンバレーでもカナダの大学と共同研究を進めているが、課題を共有し、プロポーザルを取り交わすことで、目的が明確になり、教授、学生との関係も密接な連携ができている。例えば、「どうしてこの課題が必要なのか」といったことを知りたがる教授が多いのも、企業側のモチベーションを確認し、要求に応えようとする姿勢の表れだと感じる。1月に開設したモントリオールイノベーションラボについても、大学に入り込み、連携先と密な関係を築きたいと考えている。
(問)実際にモントリオールでの共同研究を始めてみて、現地研究者や研究環境の印象はどうか。
(答)ベーシックな研究に取り組んでいることに驚き、感心した。モントリオール大学のヨシュア・ベンジオ教授がいるというのは大きい。同教授が立ち上げたスタートアップ、エレメントAIが研究を受け継いで製品化するプロセスを持っている。フランス語圏なので、外部会議に参加する際に苦慮することもあるが、研究に関する部分では言語の問題はまったくない。
(問)日系企業のブラック ジャック 遊び方研究拠点として、カナダに注目する企業はそこまで多くないようだが。
(答)AI領域で比較した場合、例えば、論文数や論文の参照数などを調査すると、1位は米国西海岸、次にボストンが続き、カナダは4位だ。この結果、通常は米国が選ばれると考えられるが、われわれはAIの基礎研究を行い、制御まで適用可能なAI技術をつくるのが目的だったので、論文の参照内容を確認し、より基礎に近い論文が参照されているモントリオールを選んだ。このように、目的に基づき調査することで、カナダも注目に値する対象としてピックアップされると思う。
なお、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社)がいかに進出してきているかといった点を投資誘致のアピールにする都市もあったが、ベイエリアにいる私からすると、GAFAの存在よりもむしろ、他社が入り込む余地があることを売りにする方が、アピールになると思う。
(江崎江里子)
(カナダ)
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