サンクトペテルブルク国際経済フォーラム、貿易紛争や「一帯一路」めぐり議論

(ロシア、中国、アルメニア、スロバキア、ブルガリア)

欧州ロシアCIS課

2019年06月14日

ロシア最大の経済イベントであるサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)が、6月6~8日に開催された。6月7日に行われた全体会合には、ロシアのプーチン大統領のほか、中国の習近平国家主席、ブルガリアのルメン・ラデフ大統領、スロバキアのペテル・ペレグレニ首相、アルメニアのニコル・パシニャン首相、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が出席した。

全体会合の冒頭で、プーチン大統領は、昨今の世界的な貿易紛争を「20世紀に形成された経済システムが、現代世界に適合していないため発生している」と指摘。今後の世界の成長エンジンは最新のデジタル技術が担うとする一方、貧富の格差などにより新技術が平等に配分されないことが世界の不安定化につながっていると述べた。加えて、「『ノード・ストリーム2』(注1)は全参加国の利益にかなうものだが、このプロジェクトへの反対者は、他国に対して『何をしてもよい』という行動に慣れている」「華為技術(ファーウェイ)を世界市場から乱暴に追い出す動きがみられている」とし、貿易紛争の原因を含め、米国を暗に批判する発言が目立った。

続いて登壇した習国家主席は、「一帯一路」構想が環境に配慮した2030年までの国連持続的発展アジェンダに盛り込まれたとし、同構想とユーラシア経済連合(EEU)との結合、「大ユーラシアパートナーシップ」構想()(注2)との調和を進め、社会の持続的発展に向けた地域経済統合に刺激を与えると述べた。「一帯一路」は各国首脳による演説後のディスカッションにおける主要テーマにも取り上げられ、パシニャン首相は、EEUと「一帯一路」の協力はアルメニアにもメリットがあるとし、インフラ整備や、イラン、ジョージアとの地域統合による国の発展につながることを指摘した。

このほか、ロシアから黒海海底を通過し南欧諸国まで天然ガスを輸送する「サウスストリーム」パイプラインプロジェクトや対ロ制裁の延長について、ラデフ大統領とペレグレニ首相はEU加盟国として、EUの方針を尊重しつつも、自国の利益・方針にはそぐわないとの見方を示した。

今回のSPIEFにおいて締結された合意は添付資料のとおり。SPIEF開催委員会副委員長を務めるアントン・コビャコフ大統領補佐官は、締結された合意数は650件、総額3兆1,000億ルーブル(約5兆2,700億円、1ルーブル=約1.7円)に達し、これまでで最大規模となったとした。今回のSPIEFには世界145カ国から1万9,000人以上が参加し、うち中国からが1,072人、米国からが520人で、それ以外は、フランス、日本、ドイツ、スイス、英国などから合計318人が参加したと説明した(「タス通信」6月8日)。

(注1)ロシアからバルト海底を通過し、ドイツに天然ガスを輸送するパイプラインプロジェクトの第2弾。米国上院議員が本プロジェクトに関わる企業に制裁を科す法案を策定していると2019年5月に報じられている。

(注2)EEUに中国、インドなどを取り込んで形成する経済圏。

(齋藤寛)

(ロシア、中国、アルメニア、スロバキア、ブルガリア)

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