USTR、インドと中国など11カ国を知的財産保護の優先監視国に指定

(米国)

ニューヨーク発

2019年05月09日

米国通商代表部(USTR)は4月25日、2019年版スペシャル301条報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。報告書は1974年通商法182条に基づき、知的財産権保護が不十分な国や、知的財産権をビジネスの軸とする米国企業などに対し公正かつ公平な市場アクセスを認めない国を特定するもの。USTRは調査対象国のうち、特に懸念のある国を警戒レベルの高い順に「優先国」「優先監視国」「監視国」に指定する。2018年に引き続き、今回も優先国に指定された国はなかった。

USTRは知的財産保護に重大な懸念がある優先監視国に、2018年版報告書で監視国としていたサウジアラビアを新たに引き上げて、11カ国(アルジェリア、アルゼンチン、チリ、中国、インド、インドネシア、クウェート、ロシア、サウジアラビア、ウクライナ、ベネズエラ)とした(表参照)。複数年にわたり優先監視国に指定されている国に対しては、報告書のアクションプランで指摘した懸念について進展が見られるかを、USTRが今後数週間をかけてレビューする。当該国が米国の懸念に対する適切な対応措置を怠っていた場合、USTRは不公平な貿易慣行に対抗するために、1974年通商法301条(以下、301条)に基づく対応や、WTOへの申し立てなど、必要な措置を講じるとしている。2018年版報告書では類似の記載内容はなく、不公正な貿易慣行の是正を求めるトランプ政権の姿勢がさらに浮き彫りとなったと言える。

表 2019年版報告書で優先監視国に指定された国名と連続指定年数

知的財産保護が不十分な監視国には25カ国(バルバドス、ボリビア、ブラジル、カナダ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、ギリシャ、グアテマラ、ジャマイカ、レバノン、メキシコ、パキスタン、パラグアイ、ペルー、ルーマニア、スイス、タイ、トルコ、トルクメニスタン、アラブ首長国連連邦、ウズベキスタン、ベトナム)が指定された。2018年版報告書ではカナダとコロンビアは優先監視国に指定されていたが、カナダは重要な知的財産保護規則を設けた米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)への署名、コロンビアは2018年7月に行われたアウト・オブ・サイクル審査(注)の結果を受けて、それぞれ監視国に引き下げられた。

中国は14年連続で優先監視国に特定された。報告書では、長年問題視されている知的財産の侵害や強制技術移転などの問題を解決するための根本的な構造変化が見られないと非難した。USTRの担当者は「中国はスペシャル301条報告書で提起された全ての問題に対応すべきであり、(中国の不公正な慣行の是正のため)米国は301条に基づくさらなる是正措置を含め、あらゆる手段を検討し続ける」とコメントしている(通商専門誌「インサイドUSトレード」4月25日)。

日本はいずれのリストにも指定されていないが、日本の新薬創出等加算(Price Maintenance Premium)の基準変更は、外国企業を競争上不利な立場に置く深刻な懸念事項だと指摘された。

(注)年に1度の定期的な審査とは別に行われる不定期の審査。サイクル外審査の結果によっても、優先監視国や監視国などのステータスの変更が行われる。

(須貝智也)

(米国)

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