ロシア連邦反独占局、日野自動車とVWトラック・バス部門トラトンの共同調達合弁会社設立申請を却下
(ロシア、日本、ドイツ、スウェーデン、欧州)
欧州ロシアCIS課
2019年05月22日
ロシア連邦反独占局(FAS、注)は5月13日、日野自動車とトラトン〔フォルクスワーゲン(VW)グループのトラック・バス部門で、VW、スカニア、マンの3ブランドで構成〕による、ロシアでのトラック部品の共同購買に関する合弁企業創設に関する申請を却下する決定を下した。
FASによると、本申請は競争保護法(2006年7月26日付連邦法第135-FZ号)に基づき、3月27日に提出されたもの。合弁事業は商用車のブレーキパッド、燃料供給部品、燃料タンクの購買および購買に向けた相談実施を目的としている。FASは、両社が中型・大型商用車市場で製品販売・調達に従事しており、合弁事業はロシア市場での製品価格、割引、販売量・購入量、製品レンジ、販売者の構成などに影響が生じる恐れがあるため、同法第11条1項にのっとり、カルテルと見なし、当該合弁企業の設立を禁止するとした。
競争法に詳しい法律会社NPアドバイスのナタリヤ・パンチュヒナ代表は「FASの決定文書には、カルテルに該当する兆候がはっきりと明確に記述されていない」とし、さらに、FASは通常、企業とまず面談し、競争保護法に抵触しないよう調整を指示し、その上で申請を受領するため、今回の決定は実務手続きに沿わないという見方を示した(「コメルサント」紙5月17日)。
今回の共同購買に向けた合弁会社の立ち上げは、2018年9月の両社の全世界的な協力合意に基づくもの。両社が扱う部品を共同でグローバル調達することによる、コスト削減などの相乗効果を目的とし、2019年後半に合弁会社を設立する予定としている。在ロシア欧州ビジネス協会(AEB)自動車部品委員会アンドレイ・コソフ委員長(自動車部品大手ジョンソン・マッセイのロシア法人営業マネジャー)は「(FASによる今回の決定は)グローバルレベルでの相乗効果創出に向けた懸念事項となるが、ロシアでの生産量は大きくない(ため影響は小さい)」と述べている。
なお、日野自動車はモスクワ州ヒムキ市でのトラック生産プロジェクトの立ち上げを進めており、2019年4月24日に起工式を行った。敷地面積は5万平方メートル、生産車種は小型・中型トラックで、生産能力は年間2,000台。生産開始時期は2020年半ばで、生産開始時の工場従業員数は約60人とする予定。VWは商用車大手ガズとの商用車生産に関する協業を進めており(2019年4月16日記事参照)、スカニアとマンはサンクトペテルブルクに生産拠点を有している。
(注)日本の公正取引委員会に該当。製品・サービスおよび広告、公共調達、外国投資などに関わる競争政策の立法・監督を行う機関。
(齋藤寛)
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