オースティンのインキュベーター、産学官連携で次々と新企業輩出
(米国)
ヒューストン発
2019年05月29日
米国テキサス州オースティン市のオースティン・テクノロジー・インキュベーター(ATI)は5月20日、創立30周年記念式典を開催した。ATIは1989年に設立され、大学の設置するインキュベーション組織として全米で最も歴史がある。
式典では、ATI設立当時の所長や市長、商工会議所会頭らによるパネルディスカッション、学生の起業家やATIの支援を受けた企業のスピーチ、同市のスティーブ・アドラー現市長らの登壇があり、グレッグ・アボット同州知事のビデオメッセージが紹介された。アボット知事は「ATIの貢献は、米国最大のインキュベーターとして、グローバルな課題の解決策をもたらす上で重要な役割を果たしているだけでなく、テキサス州へのより大きな投資と経済発展の触媒になった」と賛辞を述べた。
オースティン市では、コンピュータやその周辺機器、ソフトウエア関連分野の発展が目覚ましく、ハイテク産業の新拠点として注目されており、ATIをはじめとした組織と地元産学官が連携し、新企業を生み出している。
ATIは、州立テキサス大学オースティン校(UT)と提携し、学生の起業家やスタートアップ企業に専門知識、大学の教育機関と投資家などのビジネスパートナーとのマッチング、ネットワーク活動、共同ワークスペースを提供している。
ATIはこれまで300社を超える卒業企業を輩出しており、10社以上が新規株式公開、50社以上が合弁または買収されている。過去12年間だけでも総額17億ドル以上の資金調達に成功した。ATI卒業企業は、オースティン市を含む周辺都市に30億ドル以上の経済効果をもたらしたという。
ATI入居企業は循環型経済、エネルギー、食料・アグテック、ヘルスケア、運輸、水などの事業分野に広がり、特にクリーンテックに注力している。ATIはこれらの分野でUTと連携し企業の触媒となり、UTの人材や技術と企業のビジネスを結び付ける役割を果たしている。
(小山勲)
(米国)
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