アーダーン首相、キャピタルゲイン税導入を見送る

(ニュージーランド)

オークランド発

2019年05月09日

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は4月17日、連立政権内での協議の結果、現政権下ではキャピタルゲイン税(CGT)を導入しないことを表明した。その理由として同首相は「(与党)労働党としてCGTの導入を検討してきたが、(連立与党・ニュージーランド・ファースト党の反対もあり)政権内で合意に達しなかった」と述べ、「国民の支持が得られにくい」点を挙げた。付帯案の個人所得税の引き下げも見送られた。

CGT導入は、2011年の総選挙以来の労働党の公約。2017年10月に発足したアーダーン政権は、政権内に設置したタックス・ワーキング・グループ(TWG)で検討を続け、2月に公表したTWGの最終報告ではCGTの素案が示されていた。

素案によると、CGTの課税対象として土地や株式、不動産、事業資産、知的財産の売却益にかかる。一方、個人所有の美術品やボート、自動車、バイク、宝石、自宅(4,500平方メートルを上限)の売却益は免税となっていた。不動産は2021年4月の査定価格を基準に、それ以降の販売で得た利益に対して33%の課税を想定し、5年間で約83億ニュージーランド・ドル(約5,976億円、NZドル、1NZドル=約72円)の税収が見込まれていた。

CGTには産業界からも批判があった。産業界を代表する「ビジネスニュージーランド」のカーク・ホープ最高経営責任者(CEO)は「CGT導入は企業の投資資金を抑制することになりかねず、結果的に雇用創出に影響を与え、ビジネスに打撃をもたらしかねない」として、ニュージーランドのビジネス環境の競争力低下を懸念していた。

今回の決断により、次の2020年の総選挙では、CGT導入問題が、CGTに反対してきた野党第1党の国民党との争点にはならなくなる。なお、ニュージーランド・ファースト党へは、産業界から評価の声が寄せられた。

(奥貴史)

(ニュージーランド)

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