自動運転の早期実現に向け、公道での実証実験を加速

(フランス)

パリ発

2019年05月13日

フランス政府は高度な自動走行の早期実現を目指し、ルノー、PSAグループの自動運転車に加えて、自動運転の開発を手掛ける新興企業のナブヤやイージーマイルの無人運転バスを使った実証実験を加速させる。エリザベット・ボルヌ交通担当相は4月24日、パリ首都圏およびその他の地域圏を合わせ16件の実証実験プロジェクトを選出し、プロジェクトの総投資額1億2,000万ユーロのうち、35%に当たる4,200万ユーロを国が資金援助すると発表した。フランスでは2015年から80件の実証実験が行われ、自動運転車の試験走行距離は20万キロ超となっている。今回選考された16件のプロジェクトにより、2022年までに100万キロに延ばす。

今回はイル・ド・フランス地域圏(パリ首都圏)で6件、その他の地域圏の都市部および農村部で10件のプロジェクトが選ばれた。バリ首都圏では、PSAグループとルノーが自社の自動運転車を合計1万5,000キロ走らせて安全性を検証するプロジェトを行う。さらに、自動車部品バレオが地下駐車場管理事業を行うインディゴと組み、自動バレーパーキングシステムの導入を検証する。このシステムは、専用ゾーンで降車すると乗用車が自動運転で空きがある駐車場まで運ばれ、再び乗車する際にも自動運転で駐車場から専用ゾーンまで戻ってくるというものだ。また、パリ交通公団(RATP)はナブヤやイージーマイルの無人運転バスをバンセンヌの森やサン・レミ・レ・シュブルーズで「郊外の足」として利用する実証実験を行う。

その他の地域圏では、西部ナント市でPSAグループが廃線となった郊外列車の鉄道路線を利用して自動運転車を走らせるプロジェクト(7.2キロ)を実施し、中部クレルモン・フェラン市で公共交通輸送サービスのケオリスが公共交通システムの一部として、トラム、バスと連携したイージーマイルの無人運転バスを導入する実証実験を始める。中部アンドル県の農村部では、共同体が過疎地に住む「高齢者の足」として無人運転バスを使用する実証実験を行う。南西部トゥールーズ市、西部レンヌ市、南部ソフィア・アンティポリスでも、大学のキャンパス、病院などで無人運転バスを使った実証実験をする。

フランス政府は2018年5月に公表した自動運転車に関する国家戦略の中で、2020~2022年における自動運転車の導入を目指し、法制度を整備する方針を明示。4月に成立した「企業の成長・変革のための行動計画に関する法律(通称「PACTE法」)の中に、自動運転車の実証実験における責任能力の所在を明確にする項目などを盛り込んでいた。

(山崎あき)

(フランス)

ビジネス短信 34a216714a5420bc